国分グループ本社株式会社

企業の食品ロスへの取組紹介(取組状況と削減効果を見える化)

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国分グループ本社株式会社

アップサイクル、余剰商品寄贈の新しいスキームで、2030年までに食品廃棄物量を2017年比50%削減。


国分グループは、食品や酒類をメーカーから仕入れ、小売業や外食産業に供給する食品卸売業だ。「地域密着 全国卸」を掲げ、国内では北海道から沖縄まで、海外では中国やASEAN諸国を中心に、グループ会社と連携しながら事業を展開している。

全国および世界で食品を取り扱う国分グループは、食品ロスや食品廃棄物の削減にどのように取り組んでいるのか。今回は、サステナビリティ推進部の中山氏に話を伺った。

「食品ロス・食品廃棄物」を経営の重要課題に

国分グループでは「マテリアリティ(重要事項)」を設定し、それぞれに目標とKPIを掲げている。その中で「サプライチェーン」の目標として、「2030年までに、食品廃棄物量を2017年比50%削減する」を設定している。

「食品ロス・食品廃棄物の削減」をマテリアリティのひとつとした理由について、中山氏は環境への影響、経済的損失、社会的責任の3つの観点を挙げる。特に、近年は環境問題や持続可能性に対する生活者の関心が高まり、企業の取組がより重視されるようになっていることも、大きな要因だという。

「また、これらの理由を抜きにしても、『食』を基盤とする企業として、純粋に “もったいない” という気持ちが湧いてきます。世界には十分な食料を得られない人が何十億人もいる一方で、日本では多くの食品が大量に廃棄されている現実があります。」

国分グループにおいても、賞味期限はまだあるのに、納品期限を過ぎてしまったために、納品できない商品や、製造業において、製造過程で食品の端材などが発生している。

同社では定期的に廃棄処理施設の見学を実施しているが、その際に「まだ食べられる商品が次々と廃棄されている現実を目の当たりにし、社員から『もったいない』『持ち帰りたい』といった声が上がることもあります。」 と中山氏は語る。

こうした経験を通じて、社員の意識も「極力食品廃棄物を減らそう」という方向に変わっていったという。

「以前から、食品廃棄物削減の必要性については、廃棄コストの面からは課題として認識はしていました。しかし、マテリアリティとして明確に位置づけたことで、社員一人ひとりがサステナビリティや社会的責任の観点からも課題意識を持つようになりました。」

この意識改革によって、社員主導の自発的な取組が生まれ、ボトムアップとトップダウンの両輪で食品廃棄物削減を推進できる体制が整いつつある。

全国にあるネットワークを活かし、アップサイクル、フードバンクや子ども食堂への寄贈などに取り組む

「今回ご紹介するのは、サプライチェーン全体の廃棄物削減を目指す取組です。この活動を通じて、卸売業として持続可能なインフラ機能を構築するという役割・使命を果たしたいと考えています。」

国分グループは、食品流通の担い手としてだけではなく、サプライチェーン全体の最適化を通じて、持続可能な社会の実現に向けた取組を加速させている。

【アップサイクルの取組】

これまで廃棄されていた農畜産物を有効活用し、新たな商品開発を行っている。ここでは、食品端材、未利用資源、規格外野菜を活用した具体的な事例を紹介する。

◎食品端材を活用した商品開発

食品加工の際に発生する端材を活用し、新たな価値を生み出している。

  • シルクスイートの焼き芋コロッケ:干し芋の製造過程で発生する、さつまいもの皮や皮付近の身の部分を使い、コロッケを開発。惣菜としてスーパーマーケットの店頭で販売されている。
  • tabete だし麺 静岡県浜名湖産 鰻だし 白湯らーめん:中部地方での取組として、本来は廃棄される、うなぎを捌く時に出るうなぎの頭を活用し、だし(白湯)を抽出。その出汁を使ったラーメンを販売。

◎未利用資源を活用した商品開発

流通に乗らなかった農畜産物を有効活用し、新たな市場を創出している。

  • 長門ゆずきちサワー:生産者の高齢化や担い手不足により収穫されないまま廃棄されていた果実を活用し、サワーとして商品化。
  • 牡蠣クリームコロッケ:市場に流通しなかった牡蠣を使用し、惣菜として開発。

◎規格外野菜を活用した商品開発

形や大きさの基準を満たさず、流通から外れてしまった野菜・果物をジャムやジュース、ドレッシングなどに加工して商品化。

  • すりおろしにんじんドレッシング:規格外品を材料の一部として活用した環境循環型商品として開発。
  • りんごリキュール:規格外のりんごを使用し、リキュールとして開発。

その他にも、「もったいないデリカ」という企画を展開し、通常は廃棄される食材を活用した惣菜の開発を推進している。例えば、骨まで食べられる魚などを提案し、お得意先に提供している。

「全国の生産者や自治体とつながっているため、アップサイクルの相談を受ける機会が多いです。メーカーと生産者をつなぐことで、新たな商品開発を支援しています。

また、当社は全国のさまざまな業種・業態とお取引があるため、一つの未利用食品でも、惣菜、加工食品、飲料など様々な新しい組み合わせを生み出すことが可能です。このような幅広いネットワークを生かし、食品廃棄物の削減に貢献できるのが国分グループの強みだと考えています。」

【新しい食品ロス削減のスキームを構築】

これまで、国分を含む食品業界各社では、余剰商品をフードバンクやこども食堂に配布する際は、各団体と個別に交渉し、専用の配送便を手配して寄贈するという流れだった。しかし、新たなスキームでは、国分グループの卸売機能を活用し、寄贈プロセスを一元化することで、より効率的な仕組みを構築している。

具体的には、メーカーで発生した余剰在庫や、消費期限が迫っているがまだ食べられる商品などを国分グループの倉庫へ配送する便で同送する形に変更。複数メーカーのこうした商品を国分の倉庫に集めたのち、一括して子ども食堂に配送する仕組みを構築した。これにより、メーカーはこども食堂への配送手配を個別に行う必要がなくなり、トラックの運行台数が削減され、環境負荷の軽減にもつながる。また、これまで必要だった、こども食堂との調整業務などの事務作業を国分が担うことで負担も減る。

小売業においても、販売が難しくなった商品を納品でスペースが空いた帰り便のトラックで回収することで、物流の効率を向上させることが可能となる。

また従来は、寄贈だけでなく、賞味期限が迫まった商品を値引き販売するなど、様々な方法で処分していたが、ブランド価値の低下や通常品が定価で販売しにくくなるリスクが課題となっていた。新たなスキームでは、一部を有価で買い取りを行っているが、寄贈であるため、ブランド価値を損なうことなく社会貢献につなげられる。

「メーカーからの評価も高く、この寄贈スキームをさらに広げることで、食品廃棄物削減にもつながると考えています。より多くのメーカーの参画を促すため、コンソーシアムの立ち上げも予定しています。」

メーカー・小売業・外食産業を巻き込み、取組を加速

国分グループは、マテリアリティに基づき、サプライチェーン全体での脱炭素化と食品廃棄物削減に取り組み、持続可能なインフラ機能の構築を目指している。

まずは、「2030年までに食品廃棄物量を2017年比で50%削減する」を目標に掲げ、取組を加速。今後の進捗状況に応じて、目標の上方修正も視野に入れている。

「アップサイクルの推進や新たなスキームの構築など、メーカー・小売業・外食産業を巻き込んだ取組をさらに加速させています。」

サーキュラーエコノミーは可能性が広がる分野であり、メーカーや生産者と連携しながら進めていく。サステナブルカテゴリーの商品を増やし、小売業への提案を強化することも今後の重点施策としている。

「従来の技術では加工しても食べられない端材、例えばキャベツの芯、りんごの芯、とうもろこしの芯などは、新たなフードテックを活用すれば、パウダー化や液体化が可能です。こうした技術も取り入れることで、アップサイクル商品の展開はまだ広げることができると考えています。」

また、生活者の意識変化を促す啓発活動や次世代への教育にも力を入れていく予定だ。

「最近では、小売業で賞味期限の近い商品を手前から取ることを促す「てまえどり」のポップを導入する取り組みが広がっていますが、今後はイベントやアプリなどを活用し、生活者の行動変容を促す施策を強化、提案していきたいと考えています。

「継続する心・革新する力」のもと、食を通じて持続可能な社会に貢献していく。

国分グループ本社株式会社は、1712年の創業以来、「食のマーケティングカンパニー」として、食品卸を中心に事業を展開している。企業理念の「継続する心・革新する力~300年間紡いだ商いを、次世代に繋げていく。私たちは食を通じて世界の人々の幸せと笑顔を創造します。~」のもと、サプライチェーン全体で食品廃棄物削減に取り組み、アップサイクル商品の開発やフードバンク・子ども食堂への寄贈を推進。メーカーや小売業、外食産業と連携し、持続可能な社会の実現を目指している。食を通じた新たな価値創造で、次世代の教育・啓発活動にも力を入れている。

企業名:国分グループ本社株式会社
所在地:東京都中央区日本橋1-1-1
公式ホームページ:https://www.kokubu.co.jp/

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