企業の食品ロスへの取組紹介(取組状況と削減効果を見える化)

株式会社アレフ

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株式会社アレフ

食品廃棄物をそもそも発生させない取組を、地域とも連携して拡大する


1990年代から食品リサイクルへの取組を開始。2021年から3年連続、食品廃棄物の再生利用等実施率は95%を超える。


株式会社アレフは、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」「Dishers」など、全国に358店舗(びっくりドンキー 直営132店、FC213店、その他直営店 13店) (2025年1月31日現在 )を展開している。1968年に盛岡市内で「ハンバーガーとサラダの店 べる」としてはじまり、1990年代には、食品リサイクルの取組を開始している。これまで試行錯誤しながら行ってきた、食品ロス低減、食品リサイクル推進への取組について、SDGs推進部の高田氏にきいた。

社会的に食品ロスが注目される以前から、企業の課題として食品廃棄物の問題に取り組む

1990年代、経営規範である「企業は社会の中に存在し、社会の不足や不満、問題を解決することをもって、その存在根拠とする」に則り、本業から出る生ごみの処理方法を模索し、食品リサイクルへの取組を開始した。

当時、1店舗あたり1日約50kgの生ごみが排出されていた。しかし、業務用の店舗に設置できる生ごみ処理機がなかったため、家庭用コンポストを試すなど試行錯誤を重ねた。そうした中で、1997年に生ごみ粉砕乾燥処理機「ゼロワンダー」の導入を開始した。「大きさや使い勝手、さらに排出される生ごみの種類に合わせた分解方法など、リクエストに応じて開発してもらいました。」と高田氏は話す。

さまざまな取組を組み合わせた結果、現在の排出量は20〜30kgにまで削減された。

しかし、店舗によって排出される生ごみの内訳や量、客数、設置環境の違いなどにより、 同じ機械を使っていてもトラブルの発生頻度や状況が異なるなどの課題が残っている。

導入から30年以上が経った現在、技術や社会環境の変化もあり、資源化される生ごみが、より継続性のあるシステムでリサイクルできる方法を模索して取り組んでいる。

工場、店舗、物流、それぞれの過程で食品ロス低減に取組、1店あたりの生ごみ排出量が1日50kgから20~30kgに。

【産地からの物流、工場、店舗での食品ロス低減】

◎食肉のトリミング方法を加工工場で調整

現地のカット方法を、アレフの専門スタッフが現地確認して緻密に変更した結果、輸入後の廃棄量を減らすことができた。

◎自社工場で製品の管理方法と衛生レベルを向上し、食材そのものの使用期限を延ばして廃棄量を低減

工場では、ハンバーグパティの成型およびスタッキング不良率の改善や、X線ロスの低減に取り組み、廃棄量の削減に繋げている。

また、配送過程においても、物流環境と製造工程の衛生管理レベルを向上させることで、ソフトクリーム用原材料など一部食材の使用期限を見直し、食品ロス削減を推進している。

◎炊飯器を使い分けて、お米のロスを減らす

炊き立てのライスをお客様に提供したいという考えから、炊飯後に一定時間を超えた場合は廃棄をしている。時間帯によっては使用するライスの量が異なるため、需要に合わせて炊飯器を使い分け、廃棄量の低減に繋げている。

そのほか、ライスの量やハンバーグの大きさを自分で選んでもらい、食べきってもらうための小盛りメニュー(割引)も全国で展開中だ。

【もぐチャレ!!(食べきり推奨活動)】

びっくりドンキーでは、小学生以下の子どもを対象に、完食応援イベント「もぐチャレ!!」を実施している。

「もぐチャレ!!」は、チャレンジを宣言し、注文した料理(※1)を残さず食べきると表彰状を貰うことができる。表彰状がスタンプカードになっていて、チャレンジに2回成功しスタンプをためると、次回デザートがプレゼントされるという取組。

「お子様連れのお客様も多く、野菜嫌いだったり、残してしまったり、保護者の方が悩んでいる様子を見る中で、従業員の発想からうまれたイベントです。」

2006年に1店舗から始まった取組だが、2023年4月から、ポケットキッチンを除くびっくりドンキー全店で行っている。

「子どもたちはチャレンジ成功に達成感や喜びを感じることで、苦手な食べ物に挑戦し、残さず食べる意識が高まります。お子様の健やかな成長を願い、食べる喜びをより多くのお子様に体験してもらえるよう実施しています。」

【フードバンクへの食材提供】

2019年度からフードバンク運営団体との連携をスタート。一定の条件のもと、信頼できる運営団体とパートナーシップを築いたうえで、「食品の提供・譲渡に関する合意書」を取り交わして提供を行っている。

「現地にて確認もさせてもらい、冷凍、冷蔵、常温それぞれ対応できるのか、整理されている状態か、保存環境の問題がないかという確認をしています」  北海道、東北、関東、関西の17団体と連携し、2021年度7種類22フードバンクへの食品提供を行ってきた。

【食べ残しのお持ち帰り(mottECO)】

2021年4月より、びっくりドンキー全店で食べ残しの持ち帰りが可能に。

「食品ロス削減のため、お客様には「食べきれる量をご注文いただくこと」「食べきること」を推奨しております。

お客様が食べきれない商品のお持ち帰りをご希望された場合には、安全にお召し上がりいただくためのお約束をお守りいただいたうえで、ご自身の責任においてお持ち帰りいただくというルールを設定しております。」

※一部商品は持ち帰り不可。ポケットキッチン11店舗除く334店舗で実施。
2023年3月からmottECO普及コンソーシアムに参加。同じルールと認識で、食べ残しの持ち帰りが可能な社会形成の一助となるよう「mottECO FESTA」や「エコプロ」などでの発信活動も行っている。エコプロ2024では約2500名への説明も行った。

【食品廃棄物のリサイクル】

可能な店舗では生ごみ処理機「ゼロワンダー」を設置し、直営、フランチャイズなどを含めると約100台が稼働している。このゼロワンダーに入れた生ごみは、粉砕、発酵、乾燥処理をした後、生ごみ資材という発酵促進材に生まれ変わる。容積が約40%に低減される効果もあるという。

約2か月に1度、全国の協力農場に運ばれ、敷きわらや動物のふん尿などと混ぜ合わせて発酵し堆肥が作られている。約10度発酵温度が上がり堆肥化期間が短く済むそうで、出来上がった堆肥は、自家利用がされている。

堆肥化がリサイクル全体の約50%を占め、一部は店舗の生ごみから作られた堆肥が大根やお米作りに活用されハンバーグディッシュのサラダやライスとしてお店に戻ってくるリサイクルループも形成されている。

「本社のある札幌市近郊では、生ごみ資材の回収から堆肥の生産、利用までを自社で行っています。また本州の一部地域では生産者の皆さんと連携し、大根やお米がお店に還ってくるリサイクルループも行っています。」

その他、外部のリサイクラーに委託し、飼料化、バイオガス化もしている。2022年の5月には神奈川県にあるびっくりドンキー茅ヶ崎店で図のように生ごみリサイクルにより作られたメタンガスを燃料に発電した電力を店舗でつかう新たなリサイクルループもできた。

「さまざまな取組を組み合わせることで、前述のとおり、1店あたりの生ごみ排出量が1日50kgから20~30kgに少なくなりました。また、フランチャイズを含めない自社の事業所においては「食品廃棄物の再生利用等実施率」が2021年度 95.3%になり、目標としていた95%を初めて超え、2022年度95.4%、2023年度95.0%となり、3年連続で達成することとなりました。」

※食品関連事業者が再生利用等に取り組むための「再生利用等実施率(業種別の目標)」では、外食産業は50%

食品廃棄物をそもそも発生させない取組を、地域とも連携して拡大する

自社の再生利用等実施率は95%以上を維持しつつ、より上流への活動、そもそも発生させない取組を拡大していく必要がある。自社内だけでなく、地域ごとの輪の中で、地域の環境に取り組んでいる事業者と連携して、再生利用等実施率を下げないようにしながら、食品ロス、食品廃棄物の低減を継続していく。

「過去形成したスキームが設備老朽化、従業員不足などで運営困難になってくることも認識しておりますので、多様な手法を用いて、より負荷が低く、いずれの段階でも低減できることを目指して模索して参ります。その他、フランチャイズチェーン全体への波及も弊社の役割と認識しております。そのためには、各段階でのステークホルダーとなる生産者様やお取引先様、お客様のご理解のもと、関係各位にご協力いただき、食品を無駄にしてしまわない社会形成に微力ながら貢献していく所存でございます。」

社会の不足や不満、問題を解決することをもって、その存在根拠とする会社に

株式会社アレフは、「人間の健康と安全を守り育む事業の開拓」「人間の福祉を増大する事業の創設」「自然を大切にする事業の展開」を企業使命に掲げ、社会課題の解決に取り組む企業である。主力ブランド「びっくりドンキー」をはじめ、安全・安心な食材の提供と環境への配慮を重視した事業運営を行っている。

創業以来、食の安全や持続可能な社会の実現に向けた取組を積極的に推進してきた。環境負荷の少ない食材調達を進めるほか、食品廃棄物の削減や再資源化、省エネルギー設備の導入など、環境負荷低減にも取り組んでいる。また、地域社会との共生を大切にし、お客様や地域と共に、食・農業・環境について考える体験や学習機会の提供にも力を入れている。

企業名:株式会社アレフ
所在地:(本社)北海道札幌市白石区菊水6条3丁目1-26
公式ホームページ:https://www.aleph-inc.co.jp/

お知らせ

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