容器包装ごみの減量を考えるシンポジウム 「ごみの出ない売り方とライフスタイル」
- 更新日
家庭ごみの約半分を占める容器包装。今、全国各地で量り売りや通い容器を使った販売によって容器包装ごみを減らす取組が始まっています。先進事例を共有し、今後の容器包装削減の可能性について考えるシンポジウムを開催しました。
シンポジウム案内(PDF:703KB)開催目的
リユース食器を用いた食品販売の促進は、容器包装の使用量削減につながるものの、消費者においては繰り返し使用することへの衛生面での不安があるといわれています。量り売りによる食品販売も容器包装の使用量削減につながりますが、顔の見える関係がないと、そうした販売は難しく、セルフサービスでの販売を基本とするスーパーマーケットなどでは導入が困難です。
本シンポジウムは、先進的に量り売りやリユース食器を用いた食品販売を行っている事例を共有し、容器包装使用量の削減可能性について考えることを目的に実施しました。
開催日時
平成25年11月13日(水曜日) 14時00分~17時30分
(13時30分受付開始)
会場
エコギャラリー新宿(外部サイト)
新宿区西新宿2-11-4(新宿中央公園内)
開催内容
1 主催者あいさつ
東京都環境局 廃棄物対策部長 齊藤和弥
2 基調講演
“ごみの出ない売り方とライフスタイル”(PDF:4,905KB)
崎田裕子氏(ジャーナリスト・新宿区3R推進協議会座長)
3 事例紹介
(1) 「無駄のなく買える量り売りのお店 上勝百貨店」(PDF:3,648KB)
上勝町地職住推進機構 小林篤司氏
(2) 「スーパーへの容器持参を推進 西濃環境NPOネットワーク」(PDF:1,696KB)
NPO法人泉京・垂井理事 神田浩史氏
(3) 「商店街で容器持参を奨励 羽衣商店街」(PDF:519KB)
立川市商店街振興組合連合会女性部会長 池谷和子氏
(4) 「お祭り屋台での容器持参実験 新宿区原町一丁目」(PDF:648KB)
原町一丁目町会会長 松永 健氏
(5) 「株式会社エコスの社会実験」(PDF:1,018KB)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 松岡夏子氏
4 パネルディスカッション
「通い容器利用のライフスタイルの普及に向けて」
- コーディネーター
崎田裕子氏(ジャーナリスト・新宿区3R推進協議会座長)
- パネリスト
小林篤司氏(上勝町地職住推進機構)
神田浩史氏(NPO法人泉京・垂井理事)
池谷和子氏(立川市商店街振興組合連合会女性部会長)
松永 健氏(原町一丁目町会会長)
開催結果
1 基調講演「ごみの出ない売り方とライフスタイル」
崎田裕子氏(ジャーナリスト、新宿区3R推進協議会座長)から、「ごみの出ない売り方とライフスタイル」と題し、基調講演をいただいた。以下は概要。
- ごみを出ないようにするリデュース、リユースの定着が課題になっている。世界の資源消費バランスや世界の廃棄物量の推移をみても、資源を大事に使わないといけないことがわかる。
- わが国では資源消費量が少しではあるが減ってきている。また、各種リサイクル法の整備、特に容器包装リサイクル法の制定により、ものづくりの場面で3Rが進んでいる。
- ごみの発生量が減り、リサイクル率が高まっているように見えるが、最終処分場は逼迫している。23区には新海面処分場があるが、多摩地域はほとんど残余容量がない状況である。
- ごみの容積の5割は容器包装であり、5年前の容器包装リサイクル法の改正時にレジ袋削減を入口に取組を進めていくこととなったが、なかなかごみを出さないライフスタイルが広がっていない。
- ライフスタイル変革に向けた取組として、エコポイントを活用する取組がある。新宿区では新宿エコ自慢ポイントに3,000人が参加している。新宿エコ隊は3,400人が参加している。
- リユース食器を使ったごみゼロイベントやマイボトル・マイカップの持参を推奨するマイボトル・マイカップキャンペーンの動きも進展している。リターナブルびんへの取組として新宿区では「十万馬力新宿サイダー」の販売が行われている。
- コーヒーショップやコンビニエンスストアなどでもリユース容器への転換可能性がありそうとの感触を得ている。
- 小売店の取組が環境にどれほどよいかを把握し、見せていくツールが、環境省で開発されている。小売店は、「3R行動見える化ツール」を用いて環境報告書を通じてPRすることもできる。
- 場所に応じた地域循環圏を構築できるとよいと思う。このあとの事例発表をお聞きいただきたい。
2 先進事例紹介
(1)無駄のなく買える量り売りのお店 上勝百貨店
上勝町地職住推進機構 小林篤司氏
- 産業を育成すること、企業を守ることが使命と感じている。
- 上勝町では2人に1人が高齢者、お刺身のつまをビジネスにしたはっぱビジネスのまち。
- 上勝町はゼロ・ウェイスト宣言を日本で初めてしたまち。34分別している。ごみ収集車はゼロ。皆で助け合ってやってきている。
- くるくるショップへの持込はまちの人だけであるが、持ち帰りは誰でもOK。
- 上勝百貨店を通していかにごみをゼロに近づけるかと思案し、思いついたのが豆腐の量り売りであった。量り売りがごみ削減につながる考え、お店を始めた。商売ベースで成り立つかを確かめるべく1年半実証した。空き倉庫を活用し、ボランティアを投入して掃除、土木工事などの店づくりを行ってきた。
- 来店客の構成は、町内が3割、町外が7割。
- 業務用商品を仕入れ、量り売りしているが、問題が生じた際にメーカーとお店のどちらの責任か問われると、お店の責任になる。そのため、会員制のお店という形態をとり、万が一、問題が起こっても、来店客の自己責任という形で対処している。
- このスタイルがかっこよい、とならないとお店が続かないと感じている。
(2)スーパーへの容器持参を推進 西濃環境NPOネットワーク
NPO法人泉京・垂井理事 神田浩史氏
- 岐阜県南部の揖斐川河口域2市9町で構成される西濃地域(人口規模36万人)に設立されたのが西濃環境NPOネットワーク。構成団体には環境NPO以外もあるが、最初に取り組んだのがレジ袋削減。すべてのまちでレジ袋有料化をした。
- カードを持参してもらい100ポイント貯まったら植樹できる権利を付与した。
- 当初は490店舗の協力を得て、2年目には約800店舗まで広がった。レジ袋辞退率9割を達成した。
- 2008年にはマイパック持参実験も行ったが、協力するスーパーからは恒常的に行うには洗浄機が必要となるが、洗浄機の導入は費用対効果の面から困難と判断され、マイパック持参の継続を断念された。
- マイパック持参実験の継続で困りかけていた折、大垣市の独立系スーパーから、揚げ物を対象に、通い容器を持参することに協力する旨、申し出があった。このスーパーは、顔が見えるお客が多い点が特徴。
- 近年は地産地消に力を入れている。2010年から「アースデイいびがわ」を開催しているが、地産地消のお茶漬け選手権が人気。地元のお店10店舗に販売してもらい、飲食者にグランプリを決めてもらっている。このイベントはリユース容器を用いて毎年行っていたが、保健所から衛生管理面でクレームがつき、今年度はリサイクル容器で対応することとなった。多様な年齢層への浸透も狙ったイベントで、目論見通り、高齢者等にも広がった
- 流域単位の循環型社会づくりを今後は進めていきたい。
(3)商店街で容器持参を奨励 羽衣商店街
立川市商店街振興組合連合会女性部会長 池谷和子氏
- はなまるマーケットでのTV取材映像を紹介。
- 自身は夫婦で茶販売店を経営しているが、茶殻がごみになってしまうことが気になっていた。農家に聞いたら生ごみ処理機を置くよう勧められた。生ごみ処理機で乾燥した茶殻を利用して人形を作ってくれる人がいた。この茶殻入り人形を皮切りに、羽衣商店街でエコの取組を展開するようになった。平成13年7月から始め、平成14年3月に第2回東京都グリーンコンシューマー奨励賞を受賞した。
- 立川市内の26ある商店街のおかみさんが経営するお店は場所も離れているので、それぞれのお店でできるエコな取組をそれぞれでやっていこうと“エコ一店一品運動”を行うこととした。
- “エコ一店一品運動”に続き、マイバッグ運動を、さらにマイ容器運動に着手した。羽衣商店街では、“容器をもってお買い物”してもらえるよう、ラリー台紙にスタンプを貯める仕組みを導入している。スタンプが貯まると抽選会に参加でき、ECOフェスタ等のイベント開催時に1万円から500円のお買い物が当たるようになっている。
- “ごみを買わない、ごみを売らない”という動きを推進していきたい。
(4)お祭り屋台での容器持参実験
原町一丁目町会会長 松永 健氏
・原町一丁目町会では、例大祭でのごみ削減に向けて、何度も役員を集めて話し合いを行った。出店者にリユース容器の使用や家庭からの容器持参を理解してもらうのに苦労した。
・ちらしでリユース容器持参を呼びかけ、一定の効果があった。
・当初はすべてリユース容器を使用しようと考えたが、役員の打ち合わせ時にリユース容器の使用は難しいという結論となり、生ビールの販売に限定しリユース容器を使用することとした。ただし、リユース容器の持参は認めることとした。
・容器を持参して、焼きそば、たこ焼きを購入する人が多かった。
・リユース容器持参者にアンケート調査を行ったが、リユース容器持参の条件を尋ねたところ、「お金やポイントをもらえる。割引券がもらえる」への回答が多かった。実際の対応としては、リユース容器持参者には通常よりも多めに盛りつけを行った。
・町会初のごみ削減への取組となり、実際にごみ排出量も減った。また、町会の関係者の意識も高まった。
(5)株式会社エコスの社会実験
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 松岡夏子氏
- 繰り返し使える食器でのお弁当・お惣菜の販売を期間限定で実験的に実施した。使い捨て容器とリユース食器での併売を行い、売れ行きと利用者の反応について調査した。販売品目は、海鮮丼、握り寿司、手巻き寿司、カツ丼、サンドイッチの5品目、場所はエコス小平店で行った。
- 約4割がリユース食器で販売された。食器の返却率は約30%にとどまった。お店からは特段のインセンティブがないのにこれほど戻ってきたというコメントあり。
- ごみ発生量の削減効果は約9kg、使い捨て容器の資材費削減効果は27,480円。
- LCA分析結果でもリユース容器の方が地球温暖化、エネルギー資源消費、水利用いずれにおいても環境にやさしい結果となった。
- 「繰り返し使える食器のお弁当」の購入割合は約2割。店内飲食:持ち帰り=4:6。今後も購入したいと考える購入者が大半。
- 恒常的な実施に向けて想定される課題・論点として、第一に、「オペレーションの確立」が挙げられる。第二に「リユース食器の改善」が挙げられた。第三に、「導入のメリットの創出」、第四に、「返却率の向上」が挙げられた。
3 パネルディスカッション「環境問題と市民・事業者・行政の役割」
事例紹介の後、崎田裕子氏(ジャーナリスト・新宿区3R推進協議会座長)をコーディネーターに、「通い容器利用のライフスタイルの普及に向けて」と題し、パネルディスカッションが行われた。パネリストは以下の4名が参加した。
小林篤司氏:上勝町地職住推進機構
神田浩史氏:NPO法人泉京・垂井理事
池谷和子氏:立川市商店街振興組合連合会女性部会長
松永 健氏:原町一丁目町会会長
①お店で販売するリユース容器はデザイン性重視
- 上勝町地職住推進機構 小林篤司氏
- 上勝百貨店の場合、マイ容器を販売している。飽きがこない、お気に入りになる容器でないと使われないと考え、デザイン性の高いマイ容器を販売している。
- 武蔵野美術大学の学生と連携し、リユース容器のデザインを考え、リユース容器コンテストを実施している。コンテストで良いものが出てくれば、採用することとしている。
- 量り売りで購入できるものは、サラダ油、ごま油、オリーブ油、味噌、醤油、砂糖、塩等の調味料。パセリ、スパイス、マスタード、ターメリック等も対象。変わったものではクルトン。上勝町で生産しているものを基本に、徳島県で生産されているもの、四国で生産されているもの、日本で生産されているものと広げていくようにしている。
- 洗剤、ボディーソープも量り売りの対象。
- いいものを必要な分だけ買う人が多い。食中毒等でお店にクレームをつけるような人にはお店で買い物をしてもらえなくてもよいと考えている。すべてのお客様には対応できない。お店のコンセプトに理解いただける人にお店を利用してもらえればよいと考えている。
②高齢化問題への対応の必要性
- NPO法人泉京・垂井理事 神田浩史氏
- 高齢化によりお店が閉まる動きがある一方で、若い人がお店を開く動きもある。地元の商工会がNPOに加入要請するような時代になってきている。
③店舗にも来店客にも双方にメリットのある仕組みを作ることが重要
- 立川市商店街振興組合連合会女性部会長 池谷和子氏
- 米袋や茶筒を持参することが当たり前になっている。現在に至るまでに池谷さんが一軒一軒回って、それぞれのお店でやれることをやるよう何度も何度も説いて回った。お店もお客も得する仕組みであることを納得してもらうまでには時間がかかる。
④リユース容器の利用促進に経済的インセンティブの付与は重要であるが、付与の仕方にも工夫が必要
- 原町一丁目町会会長 松永 健氏
- お祭りでごみを減らすことを新宿区3R推進協議会の活動計画に挙げていた。新宿エコ自慢ポイントの導入も試みたが、十分に出店者に周知させることができず、諦めた。しかし、このような経済的インセンティブを組み合わせた実施が必要と感じた。
- 立川市商店街振興組合連合会女性部会長 池谷和子氏
- 羽衣商店街のハローチップは世田谷区の烏山商店街の仕組みを真似て導入したもの。エコポイントだけを推進してもうまくいかないのではないか。ハローチップが普及し、商店街のどのお店でもハローチップが使えることで、環境にやさしい取組を行いやすくなっているのではないか。
⑤ライフスタイル変革に、イベントを活用する方法もある
- NPO法人泉京・垂井理事 神田浩史氏
- 1ポイント2円程度である点は羽衣商店街と同じ。レジ袋削減の場合、行政、小売店、市民で協議会を組成したことで、取組が進展した面はある。
- イベントでのリユース容器利用の普及啓発効果は大きい。
⑥日常の買い物にリユース食器の利用を普及させる
- スペースふう理事長 永井寛子氏
- 弁当の使い捨て食器を何とかしたいという思いで、リユース食器レンタルを始めた。エコス小平店で使用するリユース食器を提供してほしいとの依頼を受け、協力したが、本日の発表を聞いて、課題が沢山あることがわかった。
- ただし、課題を克服することもできるという感触を得た。これからは、イベント向けだけでなく、日常の購買向けにも展開していきたいと考えている。どのように日常向けに参入していけばよいかが課題。
- NPO法人泉京・垂井理事 神田浩史氏
- 私たちは日常からスタートしているが、最初の段階では仲間作りが大事と感じている。そのため、NPOのネットワークづくりを進めた。
- 三重県見附市でレジ袋削減の先行事例があったので、参考にできたのも大きい。
- NPOのネットワークは行政域を超えているため、新しい試みということで補助金を得ることができた。何かをはじめるためにはお金が必要であり、必要なお金が手に入れば、やる気も出る。
- 補助金を得た2年間で、相当数のお店を回ったことで、こういうお店であればマイパック持参への相談に乗ってくれるだろうという感覚を得ていた。そのため、現在も協力してくれているスーパーと出会えた。
- 消費者側とお店側が、顔が見える関係になったので、実現に至ったともいえる。
- 立川市商店街振興組合連合会女性部会長 池谷和子氏
- お店はもうからないと取り組まない。ただし、マイ容器を持参してもらえるとお店には経費削減になるので、お店側は積極的に取り組む。
- テナントの意思統一を図る必要がある大型店ではなかなか推進できないだろう。
⑦コーヒーショップやファストフードでのリユース容器普及の可能性
- NPO法人泉京・垂井理事 神田浩史氏
- コンビニのコーヒーが新商品の流行大賞になっているが、マイカップを持参したらコーヒーを入れてもらえるようにできるのではないか。最初の一杯でマイカップを買ってもらい、次回以降はカップ持参を許容することでコンビニ側も資材費削減になるはず。
- 崎田裕子氏(ジャーナリスト・新宿区3R推進協議会座長)
- お店が洗浄すると大変であるが、顧客に洗浄済のコップを持ち込んでもらう仕組みはよい仕組みである。
⑧広くリユース食器の利用を普及させる
- 原町一丁目町会会長 松永 健氏
- 境内で座って食べられるような場所があれば、リユース食器の利用が増えたであろう。
- スペースふう理事長 永井寛子氏
- イベントでのごみを減らすガイドラインを作れないかと考えている。自分たちの意識を変えていく取組だけに頼っても、ライフスタイルはなかなか変革しない。
- 東京都環境局資源循環推進部長 齊藤和弥
- マイボトル、マイカップ、マイパックが進んでいけばよいと感じている。消費者の意識変革が必要不可欠であるが、大きなネックになるのが賞味期限信仰の問題。課題解決に向けて一緒に考えていきたい。
- 2020年の東京オリンピックではごみの出ないオリンピックを目指したい。リユース容器、リユースカップを使うオリンピックにしたい。これを契機に、ごみの出ない都市をつくっていきたい。
- 崎田裕子氏(ジャーナリスト・新宿区3R推進協議会座長)
- 非日常から日常へと考えると、2020年のごみの出ないオリンピックを契機に、2021年からは日常でリユース容器利用が浸透しているとよいと感じた。
- ドイツのある都市では、市が関係するイベントではリユース食器以外の使用を認めないとする条例を制定している。10mの洗浄ラインを作ることで、条例をつくっていた。オリンピックでも何らかの条例化がされるとよいのかもしれない。
- 皆の取組一つひとつをつなげていくことが重要。本日壇上にお集まりいただいたパネリストの方々は、つなげていく取組を実践している方々。このような取組の情報をもっと発信していけたらよい。