東京都溶融スラグ資源化指針
- 更新日
平成15年4月1日
東京都溶融スラグ資源化指針(改定)
本指針は、東京都の各自治体が、溶融スラグを生産し、土木資材等として資源化を図る際に、配慮すべき事項を示したものである。
1.溶融スラグの品質管理要領
本要領は、一般廃棄物の焼却灰等から生産された溶融スラグを細骨材(アスファルト混合物用細骨材やコンクリート用細骨材等)とする場合に適用する。
溶融スラグは、鉄分を除くために磁選等を行うとともに、粒度調整のために必要に応じて破砕等を行い、以下に示す安全性に係る管理項目及び材料試験に係る管理項目を満たしたものとする。
また、原則として試験結果について表示を行うものとする。
1.1 安全性に係る管理項目
重金属等の溶出及び含有量基準は、以下のとおりとし、原則として溶出試験は1ヶ月に1回、含有量試験は3ヶ月に1回行う。
項目 | 溶出基準 | 含有量基準 |
---|---|---|
カドミウム | 0.01mg/1以下 | 150mg/kg以下 |
鉛 | 0.01mg/1以下 | 150mg/kg以下 |
六価クロム | 0.05mg/1以下 | 250mg/kg以下 |
ひ素 | 0.01mg/1以下 | 150mg/kg以下 |
総水銀 | 0.0005mg/1以下 | 15mg/kg以下 |
セレン | 0.01mg/1以下 | 150mg/kg以下 |
(備考)
1)溶出基準及び試験方法は、「土壌汚染に係る環境基準について(平成3年環境庁告示第46号)」に定める基準及び方法とする。
2)含有量基準は、「土壌汚染対策法施行規則第18条第2項」で定める土壌に含まれる特定有害物質の量とし、試験方法は、「土壌含有量調査に係る測定方法(平成15年環境省告示第19号)」に定める方法とする。
1.2 材料試験に係る管理項目
材料試験の項目は、以下のとおりとし、3ヶ月に1回行う。
試験項目 | 試験方法 | 品質 |
---|---|---|
粒度分布 | JIS A 1102 | アスファルト混合物用 溶融スラグ゛相当 |
絶乾密度(g/cm3) | JIS A 1109 | 2.50以上 |
吸水率(%) | JIS A 1109 | 3.0以下 |
その他必要な項目 | 受入れ先との協議による。 | 受入れ先との協議による。 |
(備考)
ただし、粒度分布については、受入れ先と協議して決めることもできる。
JIS A 1102 骨材のふるい分け試験方法
JIS A 1109 細骨材の密度及び吸水率試験方法
1.3 その他の事項
(1)溶融にあたっては、焼却灰等の溶融対象物を均一化して投入するとともに、適切な高温条件下に保つことにより溶融スラグの品質を安定させる。
(2)試料は、代表的なものを採取し、四分法等で縮分して必要量を確保する。
(3)溶出試験、含有量試験、材料試験の結果については、必要項目について表示を行う。
(4)試験結果(計量証明書等)は、利用者側の求めに応じて提示する。
(5)試験結果は、5年間保存し、サンプリング試料についても5年間保存する。
(6)ただし、各自治体において、特定の用途が見込まれる場合には、独自の仕様とすることができる。
【解説】
溶融スラグを、土木資材等として利用するためには、安全性とともに、用途に応じた品質のものを、施設ごとにあまり差異が無いように出荷することが求められている。これらを踏まえて総合的に検討した結果、溶融スラグの品質管理項目を設定して一定の品質の確保を図るとともに、出荷にあたっては原則として試験結果について表示を行うこととした。
廃棄物を原料とする溶融スラグを安心感を持って受入れてもらうためには、重金属類の溶出防止が図られているとともに、重金属類の含有量の低減化が必要であると判断し、国が示した溶融スラグの溶出基準を満たすとともに、含有量についても自主管理基準を設定することとした。
試験頻度については、溶融施設の稼動状況や季節変動を考慮し、原則として3ヶ月に1回とした。ただし、溶出試験については、国の通知に基づき1ヶ月に1回とする。
なお、溶融施設の稼動当初や収集方法が変わり一般廃棄物の性状等に変化が見込まれる場合には、溶融スラグのデータを十分に集積するまでの間、安全管理項目の試験は月に1回行うこととする。
また、溶融スラグの品質を需要先の受け入れ条件に合わすために、鉄分を除くための磁選等を行うとともに、粒度調整のために必要に応じて破砕等を行うこととした。ただし、各自治体において、特定の用途が見込まれる場合には、この品質管理に基づかなくても、独自の仕様とすることができるとした。
なお、国における環境基準の見直しやJIS等の基準化が行われた場合には、必要に 応じて見直しを行うこととする。
2.ストックヤード機能の確保
溶融スラグの供給には、需要の変動に対応できるストックヤード機能を整えることが必要である。
【解説】
溶融施設においては、定常的に溶融スラグを生産しているが、一般的に土木資材等として工事で利用する場合は、一時期に大量の資材を必要とする。
溶融スラグを土木資材等として流通させるためには、一般骨材と同様に入手しやすいことが必要であり、安定した品質の確保とともに、ストックヤード機能の確保が必要である。
このため、ある程度需要の変動に対応できる規模のストックヤード等を確保することが必要である。実施にあたっては、溶融スラグ受入れ側に、既存のストックヤード等がある場合には、積極的に活用することが望ましい。
3.民間骨材物流システムの活用
溶融スラグを骨材市場に流通させるためには、民間の骨材販売会社等へ売却することにより、既存の骨材物流システムの活用を図ることが望ましい。
【解説】
骨材の流通体系は、それに係わるメーカーや商社等が混在し、非常に複雑になっている。
しかし、都内においては、大量の骨材の需要に対応できるように民間側に物流システムが構築されているため、溶融スラグの場合も、既存の骨材の物流システムを活用できると思われる。
そのため、溶融施設側としては、出荷する際に溶融スラグの品質やストックヤード機能を確保するとともに、民間の骨材販売会社等へ売却することにより、既存の骨材物流システムの活用を図ることが望ましい。
4.溶融スラグに係る情報提供
溶融スラグの性状や利用方法ならびに各自治体で行った施工事例等の情報提供を積極的に行うことが必要である。
【解説】廃棄物を原料とする溶融スラグを新素材として、安心感をもって利用してもらうためには、溶融スラグに対する理解を得ることが必要である。
そのためには、溶融スラグの性状等の分析データを公表するとともに、溶融スラグの利用方法や各自治体で行った施工事例等について、積極的に公表して行くことが必要である。このことは、今後のJIS等の規格化に必要とする技術的知見の蓄積にも寄与することにもなる。
5.指針の施行期日
平成13年4月1日より施行する。
平成15年4月1日より改正する。