9 桧原南部都自然環境保全地域

更新日

指定データ

指定年月日 昭和55年4月30日指定、昭和63年12月21日区域変更
位置 東京都の西南部に位置し、東京都と山梨県、神奈川県との境をなす、
浅間峠-三国峠-醍醐丸を結ぶ山稜の北斜面
面積 4,053,000平方メートル

区域の概況

本地域は、浅間峠(881m)~熊倉山(976m)~生藤山(990m)を経て蓮行山(1,028m)に連なる都県境山稜の北斜面矢沢及び熊倉沢の流域の区域と、蓮行山~大蔵里山(827m)を経て醍醐丸(862m)に連なる都県境山稜と、醍醐丸から市道山(795m)に連なる八王子市との境をなす稜線において唐ノ木沢と漆ヶ谷沢を分け小坂志沢に下る尾根の北及び西斜面の小坂志沢流域の区域を対象とし、ミズナラ-クリ群集を中心に、コナラ-クリ群集及びフサザクラ-タマアジサイ群集などの天然林が連なって分布する区域である。

自然の概要

1.植生

本地域の標高は、400m(小坂志沢中流部)から1,028m(都県境稜線蓮行山)にわたっており、標高700~800mを境として上部はブナクラス域、下部はヤブツバキクラス域に含まれ、標高により植生分布が異なり、多様な植物層が見られる。
上部地域には、笹尾根及び吊尾根の稜線に沿って、帯状にブナクラス域の代表的な代償植生であるミズナラ-クリ群集が分布しており、下部地域にはミズナラ-クリ群集に接して、コナラ-クリ群集が広く分布している。
沢沿いには、ヤブツバキクラス域上部からブナクラス域下部にかけてフサザクラ-タマアジサイ群集が分布し、尾根筋には所有界などのために残されたアカマツやモミの巨木が断続して線状に分布しているのが見られる。

2.野生動物

>豊かな植生と尾根、沢の入り込みの多い複雑な地形とが相まって、野生生物が数多く生息している。
哺乳類では、ニホンザル2群の生息が見られるほか、クマ、イノシシ、キツネなど17種が生息している。
鳥類では、クマタカ、サシバなどの猛禽類や、ヤマセミ、アオゲラ、サンショウクイ、カワガラス、キビタキ、ヒガラなどの繁殖が確認されており、年間を通じ32科75種が生息している。

3.地形、地質

この地域は南秋川の支流である小坂志沢と矢沢の上流流域である。地域の南端を東西に走る尾根は通称「笹尾根」と呼ばれ、奥秩父連嶺に連なる褶曲山脈の一部であり、山梨、神奈川との都県境にもなっている。
この笹尾根から北に延びる多くの支脈が小坂志沢、矢沢の強い浸食作用のため複雑に分岐しており、斜面は急峻で谷密度が高い。
地質的には中生代白亜期に形成された小仏層群に属し、主として砂岩と粘板岩が互い違いとなった土層からなる川乗層が広く分布している。山梨県寄りの稜線部には、帯状に粘板岩、泥岩を主とした小伏層が、神奈川県寄りの稜線部には、砂岩、硬砂岩からなる笹野層が分布している。

4.気候

冷涼型大陸性温帯気候に属し、気温は最高33.3℃、最低-12.5℃、年平均12.3℃で平野部より約3℃低い。雨量、降雨日数とも比較的多く、多湿で樹木の生育に適している。

保全の方針

ミズナラ-クリ群集の分布する地域を中心として、この地域と一体となって良好な自然を形成している地区を特別地区に指定する。特別地区内では、原則として植生の群落構成を変えるような行為は規制する。
また、尾根の歩道周辺のみ植生管理を行う。

指定時の植生

番号 植生名 現況
21 コナラ-クリ群集 暖帯上部に分布する、かつて薪炭林として利用されてきた二次林で、上限でミズナラ-クリ群集と接するが、この地域での境界は標高700~800mである。
コナラが優占し、群落上限付近では、単木的にミズナラが含まれる。
22 アカマツ-ヤマツツジ群集 母岩の露出したやせ尾根や比較的乾燥したところに生育し、本地域では醍醐丸付近の尾根筋に一団として分布が見られる。
26 スギ・ヒノキ植林 比較的緩斜面の土壌の安定したところや、沢沿いに植林されている。すべて小規模で、地域に占める割合は非常にわずかである。
56 フサザクラ-タマアジサイ
群集
ヤブツバキクラス域の上部からブナクラス域の下部にかけて出現する群集で、沢筋や土壌不安定地に見られる。
57 ミズナラ-クリ群集 ブナクラス域の代表的な二次林。かつて薪炭林として経営され、萌芽更新によって育林されたが、現在放置されているために徐々に自然植生に向かって復元していくものと思われる。
この群集はクリ亜群集と典型亜群集の二つに大別されるが、下部に出現するクリ亜群集が大部分で、上部に出現する典型亜群集は、笹尾根筋と醍醐丸への尾根筋上に小規模に見られるのみである。

その他

地域の中に森林法に基づく水源かん養保安林(224ha)が指定されている。

記事ID:021-001-20231206-009168