8 図師小野路歴史環境保全地域

更新日

指定データ

指定年月日 昭和53年7月4日指定、平成16年7月29日区域変更
位置 町田市の北部、図師町及び小野路町にまたがる区域
面積 366,055.78平方メートル

自然の概要

当地は、なだらかに起伏する町田市北部の丘陵地であり、周辺が急速に市街化する中で、多くの歴史的遺産とともに良好な自然環境を形成している。区域内の植生は、ほぼ全域にクヌギ-コナラ林が分布している。一部には、スダジイ、シラカシなどからなる常緑広葉樹林が残っており、全体として典型的なかつての多摩丘陵の景観を示している。丘陵に刻み込まれた谷戸には多くの湧水が見られ水田が開かれているが、放棄されているところが多く、ススキ草原やヨシの生育する湿地となっている。

この豊かな植生に依存して、哺乳類ではタヌキ、キツネ、ムササビ等が生息し、鳥類ではオオタカ、エナガ、アオゲラなど多くの種類が記録されている。また、ゲンジボタルやオオムラサキ等の昆虫類が確認されている。
区域北部の城山といわれる高みには、当地の豪族であった小山田氏の副城と思われる小野路城址があり、土塁や空濠などの遺構、小町井戸、滝壺と呼ばれる湧水もあって、中世山城の面影を伝えている。また、区域の南半部には、乗越八幡跡、こうせん塚、白山権現跡など、古くから親しまれた小野路城にまつわる塚や祠跡が樹林と一体となって点在している。

保全の方針

区域内の歴史的遺産は現状のまま保全するとともに、樹林地はクヌギ、コナラなどを主体とした明るい雑木林として保全していく。
白山、五反田、神明及び万松寺の各谷戸の水田耕作が行われているところでは、そのまま水田としての利用を維持する。耕作が放棄された水田では、都民の自然とのふれあいの場、自然を体験する場等として活用を図るほか、貴重な野生動植物の生息、生育環境にふさわしい自然空間として回復し、保護していく。

指定時の植生

植生区分 現況 植生管理
番号 植生名
1 スダジイ-
ヤブコウジ群集
尾根部に近いところに小規模に散在している。スダジイは大木になっているものが多い。低木層にはヒサカキ、アオキなどが見られる。 地域の特徴的な植生として、現況植生を維持する。
19 コナラ-クヌギ群集 コナラを主体とする二次林で、地域の大半を占めている。
高木層にはコナラが優占し、クヌギ、ヤマザクラ、イヌシデ、アカマツなどが散在する。中、下層は管理の状況により異なり、下刈等が行われていない林では低木層にシラカシ、アラカシ、ヒサカキなどの常緑樹やアズマネザサが目立つ。
下刈が行われている林では、ほとんど低木層を欠き、草本層はアズマネザ サやヤブコウジなどが多い。
生物の多様性に優れた明るい雑木林の状態を継続させるために、萌芽更新、下刈、除間伐等を行う。
26 スギ・ヒノキ植林 成林した林であり、下刈等は行われていないが、林床は草本が若干見られる程度である。
通常低木層を欠き、草本層にはイノデなどの大形シダやジャノヒゲ、チヂミザサなどが生育する。
適切な間伐を行うことにより広葉樹の導入を図り、スギ・ヒノキの大径木を中心とした針広混交林とする。
28 モウソウチク・
マダケ林
区域内のあちこちに見られる。管理されておらず、桿は細いものが多く、周辺の雑木林に侵入して次第に広がっている。
林床はジャノヒゲ、アオキなどがわずかに生育しているが、全体的に暗い林となっている。
過密となった竹林は、適切な除間伐を行うことにより健全な竹林として管理する。また、周囲の雑木林や畑に侵入した竹は除去し、場所を選んで雑木林や畑の環境を復元する。
30 ススキ-
アズマネザサ群集
耕作を放棄された畑や、伐採後雑木林に更新されなかったところなどに見られる。
一部ではアズマネザサが密生して他の植物はほとんど見られない。
過密となっているアズマネザサは、刈り払うなどにより密度を調節する。また、場所を選んでかつての畑などの環境に復元する。
31 ススキ-チガヤ群落 小面積だが、定期的な草刈りが行われている白山谷戸や万松寺谷戸の耕作放棄した畑などに見られる。 定期的な草刈りを行うことにより、明るい草地として維持する。
35 ニシキソウ-カラスビシャク群集
(耕作畑雑草群落)
白山谷戸、神明谷戸などの一部に分布する。畑として耕作されており、四季折々の野菜等を生産している。 畑として耕作を継続する。
36 ヒメムカシヨモギ-オオアレチノギク群落他
(耕作放棄畑雑草群落)
白山谷戸の一部に分布する耕作放棄された畑の跡地である。
ヒメジョオン、ススキ、クズなどが生育する。
明るい草地を目標にして、草刈りを定期的に実施する。
38 落葉果樹園 城山や万松寺谷戸などに分布し、クリやウメの栽培が行われている。 果樹の栽培を継続する。
45 コナギ-ウリカワ群集
(耕作水田雑草群落)
神明、五反田、白山、万松寺の各谷戸に分布する。
耕作中の水田である。
水田耕作を継続する。
46 ミゾソバ群集他
(耕作放棄水田雑草群落)
神明、五反田、白山、万松寺の各谷戸に分布する。かつては水田として耕作されていたが、耕作放棄により乾燥化が進んでいる。
コブナグサ、シカクイ、ミゾソバなどが生育する。一部にはハンノキなどが進入し湿生林となっている。
絶滅のおそれのある貴重な動植物の生息・生育環境を保全するために、畦や水路を保全し水の適切な管理を行う。また、農道、土手などの草刈りや補修を定期的に実施し、各環境区分を明確に保つ管理を行う。活用を図る谷戸の一部では、里山体験活動等の一環として水田の復元及び稲作を行う。
湿生林の一部は、そのまま保全する。

保全地域の運営その他活用に関する事項

  1. 企業等による社会貢献活動の場としての活用を促進する。
  2. 人の歩くルートを定めるなどにより、人の過剰な入り込みを制限し、農業者による営農活動への障害の発生を防止する。また、貴重動植物の生息環境及び生育環境の保全を図るために、伝統的な農業技術を活用した管理を行うとともに、盗掘等を防止する対策を構ずる。また、研究者からの求めに応じて、生物多様性保全に資する研究の場としての活用を図る。

野生動植物保護地区の指定に関する事項

水田やため池等で構成される里山環境に生育するミズニラ等の貴重植物の保護のため、条例第25条の規定に基づき、神明谷戸内の一部を「野生動植物保護地区」に指定する。

  1. (1)面積 6,254.30m2
  2. (2)保護すべき野生動植物の種類
    野生動植物保護地区内に生育する次に掲げる植物の採取、損傷を規制する。
    ミズニラ、ミズハコベ、アブノメ、ミズオオバコ

東京グリーンシップ・アクション
企業・NPO等と行政が連携して、保全地域で自然環境保全活動を行っています。

散策にあたってのお知らせ
図師小野路歴史環境保全地域 内には、 一般の土地所有者の方が所有し、耕作等している民有地が多くあります。このため、散策できるルートを定めています。 ルート外への立入りはできませんのでご注意下さい。
散策できるルート(PDF:329KB)
図師小野路チラシ(PDF:612KB)

記事ID:021-001-20231206-009167