東京のツキノワグマ
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東京にもクマが生息しています!
東京都の西に位置する多摩地域(西から順に奥多摩町、檜原村、あきる野市、青梅市、八王子市、日の出町)の森林にはツキノワグマが生息しており、東京は世界的にも珍しい「クマが生息している首都」です。
ツキノワグマは繁殖率が低いため、一度、ある一定以下まで生息数が減ってしまうと回復がとても難しい動物ですが、人身被害や養蜂場・養鶏場・養魚場などでの食害、スギ・ヒノキ林での樹皮剥ぎといった農林水産業被害を引き起こす加害獣でもあります。
都内における位置づけ
ツキノワグマは、東京都の保護上重要な野生生物種(東京都レッドリスト2020年版)において、南多摩地域(*)で絶滅危惧2類(VU)(注1)、西多摩地域(*)で準絶滅危惧(NT)(注2)として評価しています。また、アジアクロクマとも呼ばれ、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)では、国際希少野生動植物種に指定されています。
- 絶滅危惧2類(VU)
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類」のランクに移行することが確実と考えられるもの - 準絶滅危惧(NT)
現時点での絶滅危惧度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの- 1B類、2類の数字の正しい表記はローマ数字です。
(*)南多摩地域:ツキノワグマの生息地では八王子市が該当
(*)西多摩地域:ツキノワグマの生息地では奥多摩町、檜原村、あきる野市、青梅市、日の出町が該当
狩猟の禁止について
東京都ではツキノワグマの保護のため、平成20年4月1日から狩猟による捕獲等を禁止しています。
区域:八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町、檜原村及び奥多摩町
期間:令和9年3月31日まで
生態について
東京の山に住むツキノワグマは、一般に次のようなサイクルで生活しているといわれます。
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春(3月下旬-5月)
3月下旬から4月中旬にかけて冬眠から覚めて活動を開始し、若葉、花、山菜やタケノコなどを食べる。冬眠中に出産したメスは、5月頃にやっと冬眠穴から移動する。 - 夏(6月-8月)
野生のサクラ類やキイチゴ類などの柔らかい木の実、ハチやアリなどの昆虫を食べる。食べ物が少ない時期なので、あまり活発に活動しないが、人と遭遇する機会は最も多い。6月は交尾期にあたる。1歳半になった子グマは親離れする。 - 秋(9月-11月)
木に登り、枝を折りながらドングリ、クリなどの木の実を大量に食べて脂肪を蓄え、冬眠に備える。この際、樹上に「クマ棚」と呼ばれる食痕ができる。 -
冬(12月-3月下旬)
樹洞や岩穴などで冬眠する。山に食べ物が少ない年は、11月頃に冬眠に入ることもある。なお、冬眠中でも何らかの刺激を受けると瞬時に覚醒して動き出す。メスは冬眠中の1月下旬頃に1頭又は2頭出産する。
ツキノワグマは、胸にある白い三日月状の模様が特徴で、オスの場合、成獣で体重70kg前後の個体が多く、メスの場合、成獣のオスよりも一回り小さい体重50kg前後の個体が一般的となります。ただし、個体差や季節変動も大きく、中には体長140cm、体重100kgを超える個体も現れます。 また、鋭い爪と牙を持っており分類学上は食肉目に分類されますが、雑食で食べ物の多くは植物質であり食べるために動物を襲うことはほとんどないといわれます。
その性質は基本的には臆病で、人の気配を感じると逃げていきますが、人と鉢合わせたときなどに驚いて襲ってくることがあります。特に、子グマを連れている母グマは興奮しやすく非常に危険です。
木登りが上手で、時速40kmで走ることもでき、泳ぎも達者で奥多摩湖を泳いで横断したという情報もあります。
都内で撮影されたツキノワグマの痕跡(写真提供:東京都レンジャー)
- 爪や牙で皮をはぎ取られた樹木(クマはぎ)
- 支柱を壊された案内板(クマはぎ)
- 樹上にできたクマ棚
- ツキノワグマの足跡
- 食べ残した栗の皮
- ツキノワグマのフン