and now合同会社の取組
- 更新日
and now合同会社
廃棄されるはずだった花から紙を作る。新たな価値の創出と、大気汚染物質の削減を実現したand now合同会社。
and now合同会社 代表 永原あやこさん
「廃棄されるはずだった花を紙の原料として再利用することで、お花循環型社会の実現と大気環境の改善を目指したい」と話す。
① 大気環境改善のために、どのような取り組みを行っているのですか?
捨てられるはずだった花を原料にして「紙」をつくり、アート作品としてアップサイクルすることで、花の命を循環させる「お花循環型社会」を目指していますが、その過程で大気環境へのネガティブな影響を減らす方法を選んでいます。
一般的な和紙には、樹皮が使われています。製紙の過程で火を使って樹皮を煮沸する工程があり、その際に大気を汚染するNOx(窒素酸化物)が発生します。私たちは紙を作る段階で煮沸という工程がないため、火を使わずに済み、NOxの排出を抑制できるのです。また、花を軟化させ、分解する過程で使う溶剤も、自然界に存在する物質に分解される酸素系溶剤を使っています。
※NOx(窒素酸化物)
工場のボイラーや自動車等による燃料の燃焼時に発生し、太陽光と反応して光化学スモッグの原因となる。
酸素系溶剤に花を漬け、火を使わずに植物繊維を分解・軟化する
② 取り組みが生まれたきっかけを教えてください。
元々、花が好きで、花に携わっていきたいと思い、資格を取得してアロマセラピーの仕事をしたり、ドライフラワーなどの制作を行うなどアーティストとしても活動しています。
そのような仕事をしている中で、イベントなど、様々な場面に飾られ、華やかさを演出してくれる花が、終了と同時にゴミ袋に詰められて廃棄されていく現実を目の当たりにして、悲しい気持ちになりました。廃棄するのではなく有効活用する術があるのではないかと、紙としてアップサイクルすることを思いつきました。
③ 取り組みに効果はありましたか?
これまで約1年間で、スタンド花で換算すると約120基分の廃棄されるはずだった花を、制作工程で大気環境に配慮しつつ紙としてよみがえらせてきました。
2024年には「Japan Handmade of The Year」に、廃棄されるはずだった花を紙に再生したアート作品を出展し、個人として東京都知事賞をいただき、さらに2025年には土に還るポットを出展して、会社としても同賞を受賞しました。また、大阪・関西万博への出展も実現しています。
花から作った紙を使ったワークショップ。万博会場でも行われ、多くの参加者で賑わった
今後は、廃棄されるはずだった花から作った紙をより多くの皆様に届けられるようにしていきたいです。更に、その紙で糸を紡ぎ、テキスタイル製品の開発を手がけたいと思っています。東京などの大都市で開催されるイベントやコンサートを華やかに飾った花が、「紙」として再生し、循環していくことで新しい産業に育てていけたらと考えています。
廃棄花を使った紙は様々な風合いを楽しめるのが特徴。同じ花でもアトリエ内の湿度や温度などによっても微妙に仕上がりが違ってくるという
④ and now合同会社のClear Skyとは?
企業の規模によって「できること」は違ってくると思いますが、身近な取り組みが大きな変化につながることを願い活動を続けています。私たちは小規模ながらも花を通して環境負荷の低減を意識した循環型社会の実現と、同時に東京や日本、そして世界の大気環境の改善を目指していきます。
アトリエの壁には花から作った紙を用いた作品が飾られている