水質総量規制に関わる用語集
赤潮
水中に生存している微細な生物(主に植物プランクトン)が異常に増殖し、このため水の色が著しく変わる現象のことを言います。水の色は原因となる生物によって異なり、赤褐色、茶褐色等の色を呈しますが、その色の種類にかかわらずこれを赤潮といっています。赤潮の原因としては窒素、りんの増加に伴う水域の富栄養化、陸水や降雨による塩分低下等の物理的刺激などの説があります。赤潮を発生させるプランクトンには毒性を持つものもあり、その水域の生物に被害を与えることがあります。東京都内湾の赤潮の年間発生日数は、ここ数年は夏季を中心に100日程度です。
詳しくは、こちら(赤潮発生状況について)
汚濁負荷量
汚濁負荷量とは、水の汚れ具合を表す指標のひとつです。排水に含まれる有機物、窒素、りんは、河川や海域の水質汚濁の原因になり負荷を与えることから、それらの量を汚濁負荷量とよびます。
汚濁負荷量の総量
汚濁負荷量の総量には、水質汚濁防止法が規制対象としている工場や事業場からの排出水による汚濁負荷量だけでなく、各家庭等からの排出水による汚濁負荷量も含めて、生活、産業その他すべての負荷量が含まれています。
化学的酸素要求量(COD)
水中の汚濁物質の量について、それが酸化剤で化学的に酸化するときに消費される酸素量をもって表したものです。数値が大きくなるほど汚濁が進んでいることを示します。水質環境基準では、海域及び湖沼の水質汚濁指標として用いられています。
下水処理
日常生活から排出されるし尿や炊事、洗濯等の生活排水、工場・事業場から排出される産業排水などを下水道管で下水処理場に集めて、汚れを取り除くことです。まずは、下水に含まれる砂やごみなど水に溶けないものを、沈殿やろ過で取り除きます。次に、下水を微生物と混ぜ合わせて空気を吹き込み、下水に含まれる汚れなどを微生物に食べさせて取り除きます。最後に、微生物を回収し、消毒してから、下水処理水として河川や海域に放流します。
下水処理場の再生水
通常の下水処理に加え、ろ過処理やオゾン処理などさらに高度な処理を行った水で、新たな水資源(再生水)としてトイレ用水や散水用水、洗浄水などに有効利用するなど、循環型社会への形成に貢献しています。
下水の高度処理
下水処理のうち、有機物や浮遊物質(ふゆうぶっしつ)、赤潮等の原因ともなる窒素、りんを標準的な処理よりも取り除く処理のことです。
高度処理には、整備に多くの時間を要すること、より多くの電気を必要とするという課題がありますが、電力使用量を増やさずに一定の水質改善を早期に実施可能な準高度処理の整備を推進して水質改善をスピードアップするなど、省エネルギーにも配慮しつつ、下水処理水の水質をより一層の改善を進めています。
合流式下水道
下水道の集水方式のひとつで、汚水と雨水を一つの下水道管で下水処理場へ流す方式で、強い雨が降ると、市街地を浸水から守るため、汚水混じりの雨水が河川沿いの吐口やポンプ所から河川や海などに放流されるしくみとなっています。
なお、汚水のみを下水処理場に送水し、雨水を雨水管で河川や海域に排水する方式を分流式といいます。
COD (Chemical Oxygen Demand)
⇒化学的酸素要求量をご覧ください。
指定項目
指定水域において水質汚濁を防止するために、水質汚濁防止法施行令第4条の2に定められた項目のことです。化学的酸素要求量(COD)、窒素含有量(T-N)及びりん含有量(T-P)が指定項目です。なお、窒素含有量(T-N)及びりん含有量(T-P)は、第5次水質総量削減計画から追加されました。
指定水域
人口及び産業の集中等により、生活又は事業活動に伴い排出された水が大量に流入する広域の閉鎖性海域で、かつ、排水濃度規制だけでは環境基準の達成が困難なことから、水質総量削減制度の対象に指定される海域のことをいいます。水質汚濁防止法施行令第4条の2により、現在、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海が指定されています。
指定地域
「指定水域の水質の汚濁に関係のある地域として指定水域ごとに政令で定める地域」(法第4条の2第1項)のことです。東京都においては、法施行令別表第2第1号ハに掲げる区域をいい、島しょと町田市の一部(境川流域)を除く全域です。
東京都において指定地域でない地域は、次のとおりです。町田市(相原町(殿丸及び和田内を除く。)、小川三丁目から小川六丁目まで、小山町、金森一丁目から金森七丁目まで、木曽東一丁目から木曽東四丁目まで、木曽西一丁目から木曽西五丁目まで、木曽町(二号及び五号を除く。)、下小山田町八幡平、忠生三丁目、忠生四丁目、鶴間一丁目から鶴間八丁目まで、常盤町、中町一丁目、中町二丁目、根岸一丁目、根岸二丁目、根岸町、原町田一丁目から原町田六丁目まで、南つくし野一丁目、南町田一丁目から南町田五丁目まで、森野一丁目から森野六丁目まで、矢部町、小山ヶ丘一丁目から小山ヶ丘六丁目まで及び金森東一丁目から金森東四丁目までに限る。)、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村及び小笠原村
指定地域内事業場
指定地域内にある日平均排水量50立方メートル以上の特定事業場のことです。
浄化槽
浄化槽は、下水道が整備されていない地域等において、トイレ排水(し尿)や生活雑排水(炊事、洗濯及び入浴等)を、微生物の力によりきれいにして、水路等へ放流するための設備です。
浄化槽には大きく分けて2種類あり、合併処理浄化槽は、トイレ排水(し尿)に加えて生活雑排水を処理するため、川や海などの水質汚染防止に大きな力を発揮します。
一方、単独処理浄化槽はトイレ排水(し尿)だけを処理するので、合併処理浄化槽の8倍もの汚れが河川に放流されてしまいます。現在では単独処理浄化槽を新たに設置することはできません。
生活排水
人の生活に伴い排出される、トイレ排水(し尿)及び生活雑排水(炊事、洗濯及び入浴等) のことをいいます。
総量規制基準
指定地域内事業場に課せられる排水に係る基準であり、化学的酸素要求量、窒素含有量及びりん含有量の3項目があります。一日に排出できる汚濁負荷量の許容限度が、業種、排水量及び設置時期に応じて事業場ごとに定められます。許容限度を計算する際に用いる業種別の係数は、環境大臣が定めた範囲内で、都府県ごとに知事が定めます。
総量削減基本方針
指定水域の汚濁を防止するため、水質汚濁防止法第4条の2の規定により環境大臣が定める方針のことで、削減の目標、目標年度その他汚濁負荷量の総量の削減及び水環境の改善に関する基本的な事項等が含まれます。この基本方針に基づき、都府県知事はそれぞれの総量削減計画を定めることになります。
総量削減計画
指定水域の汚濁を防止するため、水質汚濁防止法第4条の3の規定により都府県知事が定める計画のことで、環境大臣が定めた総量削減基本方針に基づき、同方針で定められた削減目標量を達成するため、発生源別の汚濁負荷量の削減目標量、この削減目標量の達成の方途、その他の事項等が含まれます。昭和54年に総量削減制度が開始して以来、5年ごとに策定されてきました。最新の計画は、令和6年度を目標年度とする第9次計画です。
窒素
窒素は、たんぱく質などに含まれ、人体を構成する元素のひとつです。水中ではアンモニア性窒素、硝酸性窒素などの状態で溶けており、赤潮が発生する要因のひとつになっています。
窒素含有量(全窒素)及びりん含有量(全りん)
全窒素は、アンモニア性窒素、硝酸性窒素などの窒素化合物中の窒素の総量であり、全りんはりん化合物や有機性りんなどりん化合物中のりんの総量を意味しています。東京湾では、窒素やりんなどの栄養塩類の流入により富栄養化し、夏期の水質悪化の大きな原因となっています。
特定事業場と特定施設
特定事業場とは、特定施設を設置している事業場のことです。
特定施設とは、人の健康及び生活環境に被害の生ずるおそれのあるものを含んだ汚水を排水する施設として、電気めっき施設や下水処理場等、法律で定められた施設(水質汚濁防止法施行令別表第1)に掲げられている施設)をいいます。
なお、指定地域内では、水質汚濁防止法施行令第3条の2により、処理対象人員が201人以上500人以下のし尿浄化槽も特定施設となります。
特定排出水
排出水(特定事業場から公共用水域に排出される水)から、1.雨水のように、事業活動その他の人の活動に使用されない水、及び2.間接冷却水のように一般的にその用途に供されることによって汚濁負荷量が増加しない水、を除いたものです。
二次汚濁
水質汚濁について、汚濁物質が、その水域の中で生成されることを言います。東京湾は、海水中の栄養塩類の増加、蓄積によって富栄養化状態にあり、このため植物プランクトンが増殖し、水質が悪化しています。この二次汚濁の影響により、夏期のCODの濃度は、冬期のそれの2倍程度の値となっています。
貧酸素水塊
春から秋にかけては、上層と下層の海水の循環が起こりにくく、上層へ溶け込んだ酸素が下層へ供給されない時期です。このような状況下で、大量に発生したプランクトンが死滅すると海底に沈降し堆積します。それが分解される時に酸素を消費して、生き物が生きられない貧酸素状態を作ります。この貧酸素状態の水塊のことを言い、東京湾では夏から秋にかけて広く存在します。
▸詳しくは、こちら(貧酸素水塊)
りん
りんは、脂質などに含まれ、人体を構成する元素のひとつです。水中では、りん酸性りんの状態で溶けており、赤潮が発生する要因のひとつになっています。