「東京における自然の保護と回復に関する条例」改正について
- 更新日
平成13年3月
環境局
1 条例改正の趣旨
昭和47年の条例制定以来、東京の自然環境及び自然保護行政を取り巻く状況が大きく変化しており、その変化に適切に対応し、「都市と自然が調和した豊かな東京」の実現をめざして、現行条例を全面的に見直す。
2 改正のポイント
①市街地等の緑化の推進
- 屋上等の緑化を含む緑化計画書等の届出の義務化など
②丘陵地・山地などの自然地の保護と回復
- 里山保全地域及び森林環境保全地域の新設など保全地域制度の拡充
- 残土の埋立等を規制対象に追加、規制逃れの防止など開発規制の強化
- 区市町村と連携して湧水などを保全
③野生動植物の保護
- 「東京都希少野生動植物種」及び「東京都希少野生動植物保護区」の指定
- 「保護増殖事業」の実施、移入種の放逐禁止など
④都民との連携強化
・保全活動指導者の認定や都民による保全地域の保全事業など
⑤法令等の制定及び改正に伴う各種規定の整備
3 改正条例の体系
第1章 総則
第2章 都民及び区市町村との連携等
第3章 市街地等の緑化
第4章 自然地の保護と回復
第1節 保全地域の指定
第2節 湧水等の保全
第5章 野生動植物の保護
第6章 開発の規制
第7章 雑則
第8章 罰則
附則
4 改正条例の概要
第1章 総則
①目的(1条)
- 近年、重要な課題となっている、建築物を含む市街地等の緑化、里山などの自然地の保護と回復、生態系保全のための野生動植物の保護等の施策推進を明記。
- これらの施策の推進により、広く都民が豊かな自然の恵みを享受し、快適な生活を営むことができる環境を確保。
②施策の方針の作成及び公表(8条)
- 知事は、特に重要と認められる自然の保護と回復の施策の方針を作成し、公表。
第2章 都民及び区市町村との連携等
①指導者の育成と認定(9条)
- 知事は、都民による緑地保全等の活動を促進するため、普及啓発、技術指導等を行う指導者の育成に努力。
- 自然の保護と回復に関する知識、技術等に応じて、指導者を認定。
②都民の協力(10条)
- 知事は、条例違反の疑いのある行為について都民からの通報を受けて、調査及び必要な措置を行い、処理経過等を公表。
③区市町村との連携(11条)
- 都は、施策の実施に当たり区市町村と連携するとともに、区市町村に対し支援。
④東京都自然環境保全審議会(12条)
- 調査審議事項に、「施策の方針に関すること」、「東京都希少野生動植物種、東京都希少野生動植物保護区、保護増殖事業に関すること」を追加。
第3章 市街地等の緑化
①施設等の緑化義務(13条)
- 公共公益施設、事務所、事業所、住宅等の建築物及び敷地の緑化を義務づけ。
②緑化計画書の届出等(14条)
- 1千m2以上(公共施設にあっては250m2以上)の敷地において建築物の新築等をする場合に緑化計画書と緑化完了書の届出と完了後の緑地の維持管理を義務づけ。
③勧告(15条)
- 知事は、緑化計画書の届出を行わない場合や届出があった場合でも緑化基準に適合しないときは、是正を勧告。
第4章 自然地の保護と回復
第1節 保全地域の指定
①保全地域の指定(17条)
- 「森林環境保全地域」、「里山保全地域」を新設。保全地域は、5類型に。
- 自然公園の区域内に、森林環境・里山・歴史環境・緑地保全地域の指定が可能に。
②保全計画、保全事業(18、20、21条)
- 保全地域における保全計画に「植生管理に関する事項」、「保全地域の活用等運営に関する事項」などを追加。
- 知事の承認を受けて、保全地域の保全事業を実施できるものとして、公益法人やNPO法人を追加。
③保全地域の活用(19条)
- 知事は、保全地域における都民の自然とのふれあい、学習や体験活動の機会の確保に努力。
④森林環境保全地域に、「自然環境保全地域」と同様、「普通地区」及び「特別地区」(22、23条)を設置。
⑤区市町村に対する保全地域の使用許可等(36、37条)を創設。
第2節 湧水等の保全(38条)
- 湧水等の保護と回復に関する指針を策定し、区市町村と連携して保全に努力。
第5章 野生動植物の保護
①東京都希少野生動植物種の指定(39条)
- 絶滅のおそれのある野生動植物の種のうち、特に保護が必要と認める種を「東京都希少野生動植物種」に指定。
②所有者等の責務等(40条)
- 「東京都希少野生動植物種」の個体の所有者等に適切な取り扱いを義務づけなど。
③捕獲等の禁止等(41、42条)
- 学術研究など知事の許可を得て捕獲等ができる場合を除き「東京都希少野生動植物種」の捕獲等を原則禁止。
④東京都希少野生動植物保護区の指定等(43条)
- 東京都希少野生動植物種の保護のため必要と認めるとき、その生息地等を「東京都希少野生動植物保護区」に指定。
- 保護区内における開発の禁止や移入種の放逐禁止など。
⑤保護増殖事業(44条)
- 東京都希少野生動植物種の保護のため必要と認めるとき、「保護増殖事業」を実施。
⑥移入種の放逐の禁止等(45条)
- 移入種で地域の生態系に著しく悪影響を及ぼすおそれのある種の放逐等を禁止。
- 事業実施に当たっての野生動植物に対する配慮を義務づけ。
⑦中止命令等(46条)
- 東京都希少野生動植物保護区内における行為規制に違反した場合などに、その行為の中止等を命令。
第6章 開発の規制
①開発の許可(47条)
- 開発許可の対象となる土地の条件(樹林地、農地、草地、池沼などの自然地を含む、市街化調整区域等の乙地域では1千m2以上、それ以外の基本的に市街化区域である甲地域では3千m2以上の土地)を明記。
- 開発許可の対象となる開発行為を明記。対象行為に「残土による土地の埋立て」及び「駐車場、資材置場の建設」を追加。
- 東京都自然環境保全審議会の調査審議対象となる土地の規模要件である「3万m2以上」を明記。
- 都市計画事業、土地区画整理事業を「協議」の対象に追加。
②開発の許可の特例(48条)
- 規制逃れを防ぐため、同一の土地所有者が隣接地で開発を行うなど一定の要件に該当する開発行為を許可の対象に。
③変更の許可(49条)
- 開発行為の規模等を変更する場合の許可を新設。
④標識の掲示、廃止の承認、休止・完了の届出等(50~53条)
- 開発行為を行う場所に、標識の掲示の掲示を義務づけ。
- 開発行為を中途で廃止しようする場合に、届出を義務づけ。
- 開発行為の休止届、完了届の提出を義務づけなど。
⑤中止命令等(54条)
- 開発許可の手続違反などに伴う開発行為の中止命令等。
- 知事は、中止命令等を行った場合に、標識を設置。
⑥緑地の維持管理義務(55条)
- 開発許可で確保された緑地の所有者等に、行為完了後の緑地の維持管理を義務づけ。
⑦開発許可の適用除外(56条)
- 自然公園法による公園事業など開発許可の適用除外行為を明記。
第7章 雑則
①緑化の義務に関する区市町村条例との関係(57条)
- 区市町村の条例により定める緑化の基準が、本条例の基準と同等と認められる場合に本条例の適用を除外。
第8章 罰則
①条文の改正にあわせて、下記の事項に対する罰則を新設。(64条~68条)
- 東京都希少野生動植物種の捕獲等の禁止違反。
- 東京都希少野生動植物種の捕獲等の許可を受けた者の許可条件違反、東京都希少野生動植物保護区内の行為規制違反、同保護区で許可を受けた者の許可条件違反などに対する中止命令等違反。
- 東京都希少野生動植物保護区において必要な許可及び開発許可内容の変更の許可等に関する手続違反。
- 緑化計画書等の届出、開発許可後の中途廃止の届出に関する手続違反。
附則
①施行期日
- 平成13年4月1日
②経過措置
- みどりの推進委員は、施行日から1年以内に限り存続。
- 緑化地区の制度は、施行日から4年以内に限り存続。
- 認定済みの緑化協定は、条例改正後も有効。
- 改正条例施行の際、着手している開発行為について、施行日以後に開発許可対象面積を超える規模の変更を行う場合は許可が必要。
- 相当数の区市町村において、都と同等の緑化の基準が設けられた場合等には緑化義務の規定を見直しなど。