東京都化学物質適正管理指針

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令和2年11月4日改正

令和3年4月1日施行


1 目的

 この指針は、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成12年東京都条例第215号)第108条第1項の規定に基づき、化学物質を取り扱う事業者(以下「事業者」という。)が化学物質を適正に管理するために行うべき措置等について定めることを目的とする。

2 化学物質の使用量等の把握

(1) 化学物質の使用量等の把握

 事業者は、化学物質の使用量等について、事業所ごとに(2)により算出した次に掲げる量を把握するものとする。

ア 使用量

 事業所において使用した化学物質の量

イ 製造量

 事業所において化学反応等により新たに製造した化学物質の量

ウ 製品としての出荷量

 事業所から製品として出荷された化学物質の量

エ 排出量

 事業所から次に掲げる区分ごとに排出された化学物質の量
 (ア) 大気への排出
 (イ) 公共用水域への排出
 (ウ) 事業所における土壌への排出(埋立処分によるものを除く。
 (エ) 事業所における埋立処分

オ 移動量

 廃棄物又は廃水(下水道に放流するものに限る。)の区分ごとに事業所外へ移動した化学物質の量

(2) 化学物質の使用量等の算出方法

化学物質の使用量等の算出方法は、次に掲げる方法とする。

ア 使用量、製造量及び製品としての出荷量

 化学物質を含む材料の量に、当該材料中の化学物質の濃度を乗じて算出する方法

イ 排出量及び移動量

 次に掲げる方法のうち最も適切に把握できる方法により算出する方法
 (ア) 実測による方法
 排ガス、廃水又は廃棄物の量に、実際に測定した化学物質の濃度を乗じて求める方法
 (イ) 物質収支による方法
 取扱量(使用量及び製造量の合計の量をいう。以下同じ。)から製品としての出荷量並びに他の方法により算出した排出量及び移動量を差し引いて求める方法
 (ウ) 排出係数による方法
 取扱量に、排出係数(取扱量に対する排出量の比をいう。)を乗じて求める方法
 (エ) 物性値を用いた計算方法による方法
 化学物質の物理的化学的性状に関する数値から排ガス、廃水又は廃棄物中の濃度を推測して、排ガス、廃水又は廃棄物の量に、当該濃度を乗じて求める方法
 (オ) その他の方法
 (ア)から(エ)までに掲げるもののほか、的確に算出できると認められる方法

3 化学物質の適正管理

(1) 化学物質の取扱状況の調査及び整理

 事業者は、使用、製造及び貯蔵・保管を行っている化学物質について、事業所ごとに、次に掲げる項目を、それぞれ定める方法により調査し、その結果について使用管理簿等に整理するものとする。

ア 化学物質の種類

 化学物質の種類を調査し、整理する。なお、適正管理化学物質に該当する物質については、その旨を使用管理簿等に記載する。

イ 化学物質の使用目的

 化学物質ごとに、その使用目的を調査し、原材料用、洗浄用その他の使用目的別に分類して整理する。

ウ 化学物質の性状等

 化学物質ごとに、その性状、取扱方法、適用法令等を、安全データシート(SDS)等に基づき調査し、整理する。

エ 化学物質の取扱施設の規模等

 化学物質を使用し、又は製造する施設等について、当該施設等の能力、容積等及び当該施設等で取り扱う化学物質の量を調査し、整理する。

(2) 化学物質の取扱工程の内容

 事業者は、化学物質の使用、製造及び貯蔵・保管に係る工程(以下「取扱工程」という。)を調査し、整理するとともに、各作業内容及び当該各作業内容による化学物質の環境への排出の可能性を調査し、整理するものとする。

(3) 化学物質の管理方法等

ア 排出を防止する設備等の内容及び保守管理

 事業者は、取扱工程を検証し、必要に応じ、次に掲げる化学物質の環境への排出の抑制を図るための措置を行うものとする。
 (ア) 化学物質を取り扱う施設の密閉化の実施
 (イ) 化学物質の蒸発を防止する設備の設置
 (ウ) 化学物質を回収し、再利用する設備の設置
 (エ) 化学物質の事業所外への流出を防止するための設備の設置
 (オ) 化学物質の地下への浸透を防止するための床面の処理の実施
 (カ) 排出ガス及び排水に含まれる化学物質を処理するための設備の設置
 (キ) 化学物質を含む廃棄物を処理するための設備の設置
 なお、設備の設置その他の措置に当たっては、法令の規制基準等を遵守できる性能を有するように行うとともに、その性能を維持するため、作業前の作動の確認、運転状況の日常点検、機器類の定期点検その他の適切な保守管理に努めるものとする。

イ 排出状況の監視の方法

 事業者は、化学物質の環境への排出状況を把握するため、法令等に定める監視項目、監視箇所、測定方法、測定頻度、測定結果の記録方法等に基づき、排出状況の監視を行うものとする。排出状況の監視に当たっては、排出を防止する設備の稼働状況についても、併せて行うものとする。監視の結果、法令等の規制基準を超えるおそれのあることが判明したときには、直ちに、その原因を調査し、必要な措置を講じるものとする。

ウ 化学物質の使用合理化等排出削減に関する取組方法

 事業者は、化学物質が環境に及ぼす影響の軽減を図るため、次に掲げる取組について目標を設定し、実施するものとする。
 (ア) 取扱工程の見直し、回収・再利用の徹底等による化学物質の使用量及び移動量の削減
 (イ) 排出を防止する設備の改善及び変更による環境への排出量の削減

エ 有害性の少ない代替物質への転換

 事業者は、化学物質による環境負荷の低減、作業環境の改善及び事故の発生の防止を図るため、次に掲げる取組を実施するものとする。
 (ア) 現在、使用している化学物質から、作業方法の改善及び変更による有害性の少ない化学物質への代替
 (イ) 新たな化学物質の導入時における有害性の少ない化学物質の選定及び採用

オ 適正管理に関する規程の整備

 事業者は、化学物質の取扱いに係る法令等を踏まえ、事業所の施設及び事業内容に即した化学物質の購入、使用、保管、廃棄等の方法に関する規程(以下「化学物質取扱規程」という。)を整備するものとする。

(4) 事故時等の対応

ア 事故・災害の防止対策

 事業者は、化学物質を取り扱う施設に係る事故・災害の防止を図るため、次に掲げる措置を講じるものとする。
 (ア) 事業所の所在地が属する地域のハザードマップ(水防法施行規則(平成十二年建設省令第四十四号)第十一条第一号の規定により区市町村の長が提供する図面をいう。)その他の災害想定区域図を参照し、浸水、土砂流入等の被害想定を確認する。
 (イ) (ア)により確認した被害想定に応じて、事業所内への浸水防止や化学物質の流出防止について必要な対策を実施するとともに、浸水、土砂流入、強風等(以下「水害等」という。)に耐える設備等の整備に努める。
 (ウ) 施設、設備、配管等については、地震時の揺れ及び地盤の液状化による不等沈下の負荷に耐える構造にするとともに、亀裂等による化学物質の漏えいを容易に点検できる構造にする。
 (エ) 施設、設備、機器類等については、異常の有無、作動状況等を定期的に点検する。
 (オ) 貯蔵施設については、その貯蔵状況を点検できるような設備を設けるとともに、その周囲に防液堤等の流出を防止する設備を設ける。
 (カ) バルブ類等については、適切な操作ができるように表示を行い、誤動作を防止する。
 (キ) 保管容器、保管棚等については、結束バンドによる容器同士の連結、容器同士がぶつからないための仕切りの設置、落下防止柵の設置等の方法により保管容器の移動、破損、落下及び流失を防止するとともに、受け皿を設けること等により内容物である化学物質の流出を防止する。
 (ク) 保管棚、設備等については、床又は壁に固定する等の方法により転倒及び流失を防止する。
 (ケ) 漏えいした化学物質の回収及び拡散防止のために必要な設備・資材を常備する。
 (コ) その他、事故・災害を防止するために必要な施設の適正な管理、点検及び対策を実施する。

イ 事故処理マニュアルの整備

 事業者は、事故・災害が発生した場合の環境汚染の拡大を防止するとともに、地震・水害等による被害を回避し、又は低減するため、次に掲げる事項について事故・災害の内容を想定して定めたマニュアル(以下「事故処理マニュアル」という。)を整備するものとする。
 (ア) 事故・災害発生時の事業所内における指揮命令系統及び連絡体制
 (イ) 事故・災害発生時における知事等の関係機関への通報体制
 (ウ) 事故・災害発生時の初期対応
 (エ) 事故・災害発生時の応急措置及び汚染拡大防止策の実施方法
 (オ) 事故・災害発生時の避難の方法
 (カ) 事故・災害発生時の設備等の復旧に向けた対応
 (キ) 平時、水害等の発災直前及び発災直後並びに事故処理時の対応を時系列に沿って整理した防災行動計画(水害等による被害に備え、減災の観点から、(ア)から(カ)までの事項を踏まえて作成する。)

ウ 化学物質の貯蔵施設の容量等の把握

 事業者は、事業所内に設置している化学物質を貯蔵するタンク又は容器の種類及び容量を把握し、その内容を事業所内の見やすい場所に表示するとともに、タンク又は容器に内容物である化学物質の名称及び有害性を表示するものとする。

(5) 管理組織

ア 管理組織の設置

 事業者は、次に掲げるところにより管理責任者及び代表者を選任するとともに、管理責任者及び代表者から構成される管理組織を設置するものとする。
 (ア) 化学物質に係る適正管理の責任者として管理責任者を選任する。
 (イ) 製造部門、環境部門等の全ての部門においてそれぞれ代表者を選任する。

イ 管理組織の業務内容

 管理組織は、定期的に会議を開催し、次に掲げる事項について企画及び立案を行い、その内容を事業者に提言するものとする。
 (ア) 化学物質の管理の基本方針の策定に関すること。
 (イ) 環境への排出削減に係る取組の推進に関すること。
 (ウ) 新たな化学物質の導入又は有害性の少ない化学物質への代替の際の安全性の評価及び適否の判定に関すること。
 (エ) 化学物質取扱規程の作成に関すること。
 (オ) 事故・災害の防止対策に関すること。
 (カ) 事故処理マニュアルの作成に関すること。
 (キ) 化学物質の取扱いに関する従業員の教育及び訓練の計画に関すること。
 (ク) 化学物質の排出を防止する設備の選定、改善及び変更に関すること。

ウ 管理組織図

 事業者は、イに掲げる業務内容について、管理責任者及び各部門の代表者の役割分担を組織図により明らかにするものとする。

(6) 従業員への教育及び訓練の実施

 事業者は、管理組織の提言を受け、次のとおり従業員への教育及び訓練を定期的に実施するものとする。
 ア 化学物質を取り扱う従業員を対象に当該化学物質に関する安全教育及び事故・災害を想定した訓練を実施する。
 イ 全従業員を対象に、事業所で取り扱う全ての化学物質の適正管理、事故・災害発生時の対応等について教育及び訓練を実施する。

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