VOC対策アドバイザー助言内容の紹介

更新日
  • VOC対策アドバイザーへの依頼内容、事業所でのVOC発生の状況、事業者への助言内容を紹介します。実際の助言・報告においては、具体的な数値、図表、グラフ等を組み合わせ、より詳しい説明を行っています。

助言内容の例

  業種 対象作業 依頼内容 発生状況・助言内容
VOC発生の状況等 改善提案等
1 オフセット印刷
(枚葉)
印刷、版洗浄 水なしオフセット印刷について、VOC排出等の環境面から客観的な評価をしてほしい。
  • 水なし印刷は、水あり印刷に比べVOC発生量が削減されており印刷室の濃度も総じて低い。
  • 「改良型インキ」と称しているがVOC発生量の削減効果が見られないので、メーカーへの確認が必要。
  • 「改良型洗浄剤」は、VOC対策が確認された。
  • 洗浄剤からのVOC排出抑制のため、容器の栓や蓋の設置、洗浄手順の最適化を検討されたい。
  • 廃ウエス、廃洗浄布からの揮発防止のため、密閉容器の導入を検討されたい。
2 オフセット印刷
(枚葉)
印刷工程全般 環境配慮型印刷を推進しているが、VOCの排出状況を把握し、さらなる低減のための助言をしてほしい。
  • 水なし印刷方式と換気システムが有効に機能し、印刷室内のVOC濃度は総じて低い。
  • 印刷室内のVOC濃度は、通常作業時は10ppmC程度であるが、洗浄作業時は数倍に上昇している。
  • VOC含有の少ない洗浄剤への切替え、洗浄装置の改善(自動液洗浄の循環装置設置、自動布洗浄装置)、洗浄作業の手順の標準化、VOCに関する基礎教育の実施等を検討されたい。
  • 刷版室のVOC発生はフィルムクリーナが要因と考えられる。低VOC製品への切り替え、フイルム作業場の区切り等を検討してはどうか。
3 工場塗装
(金属製品)
スプレーガン吹付け塗装、乾燥、焼付け 塗装ブース及びバッチ式乾燥炉からのVOC排出を削減したい。試行的に処理装置を設置しているが、乾燥炉排ガスのみを処理している。塗着効率向上や工程改善について助言してほしい。
  • 乾燥炉排ガスの一部を流入している処理装置はVOC削減が確認できたが、乾燥炉のVOC濃度は、乾燥時よりもセッティング時の方が高いので、排風機の運転時期を検討されたい。
  • 塗装ブースの給排気はインバータ制御しているが、風速が高すぎるのではないか。また、吸気フィルタ部の不具合が見られるので対策を要す。
  • カップガンの希釈塗料が付着している吉野紙を廃棄する缶に足踏み式の蓋を設置する、希釈溶剤の缶をこまめに蓋閉めする等の対策を実行されたい。
  • 工場全体の給排気を塗装ブースに依存しているので、塗装室前に感知式ロールシャッターを追加するなど、エアバランスの安定化を検討されたい。
4 オフセット印刷
(枚葉)
印刷工程全般 環境配慮型印刷を推進している。工場よりVOCの排出がどれくらいあるのか把握し、排出量低減のための助言をしてほしい。
  • 印刷室内のVOC濃度は総じて低めであるが、刷版室はフィルムクリーナー由来と思われるVOC濃度が高い。
  • 性能が低下している処理装置があるので、定期メンテナンスの仕組みを構築されたい。
  • 洗浄剤については低VOC製品への転換も考えられるが、現在の使用量が標準的な使用量より多く感じられるので、洗浄手順の見直しも検討されたい。
  • ウエス入れや洗い油バケツからのVOC発生を抑えるための蓋を設置されたい。また、ベテラン作業者の洗浄作業を基本に、洗浄に使用する溶剤量を標準化してはどうか。
5 工場塗装
(金属製品)
塗装前洗浄 トリクロロエチレンから代替可能な洗浄剤を導入したいので助言してほしい。 〔現在の洗浄剤を継続使用する場合の排出抑制に関する助言〕
  • フリーボード比があまり大きくないので、同比を1.0以上に上げるように、蒸気境界面を下げる(冷却水温を下げ水量を増す)。
  • ワークの引き上げ速度を5cm/sec程度に下げる。
  • ワークの大きさや量により蒸気洗浄時間を加減する。ただし、鋳造物のように熱容量の大きいものは、表面が凝縮液で濡れた状態が長いので注意すること。
  • 洗浄装置の運転・停止と冷却水の入切を適正にすること。
  • 洗浄装置周辺の気流を乱さないこと。
〔トリクロロエチレンの代替洗浄剤に関する助言〕
  • 現在の汚れ落とし、脱脂であれば、水系洗浄剤でも洗浄能力としては適用できそうであるが、すすぎ排水のための排水処理設備の新設、すすぎ槽の設置スペースの問題から導入は困難と思われる。
  • 炭化水素系の洗浄剤に転換する場合は、引火
  • 防爆に注意が必要。また、沸点が高いので、高温乾燥又は減圧乾燥が必要となる。高価ではあるが、真空洗浄
  • 乾燥装置も商品化されているので検討されたい。
  • 既存の洗浄装置をそのまま使用可能なトリクロロエチレンの代替として、臭素系洗浄剤があるが、大防法に定義されるVOCであり価格も高いので、蒸気回収装置の設置や密閉式洗浄装置の導入を検討する必要がある。
6 電気部品製造(プリント基板) スクリーン印刷 VOC発生状況を把握し、削減取組の手法を助言してほしい。
  • 印刷室のVOC濃度は、インキ及び洗浄剤からの発生により高濃度を示しているが、インキからの発生割合が高いと考えられる。インキ使用量の削減、低VOC型インキへの転換を検討されたい。
  • 同じ室内でも、レジストブースが他に比べて濃度が高いので、パーティション・ビニールカーテンで遮断し、印刷品質に影響を与えないような低圧低容量の排気を検討されたい。
  • 排出抑制策として、シンナー使用量の削減やウエス等からの拡散防止策があるが、酢酸エチルの削減は悪臭防止にも有効である。
  • 未乾燥の試し刷りシートは、単独の密閉容器に保管・廃棄するとよい。
  • 洗浄用溶剤の小口容器化や作業後の回収をルール化している点は評価できる。
7 金属加工・印刷(ネームプレート、銘板製造) スクリーン印刷、アルマイト写真 スクリーン印刷、アルマイト写真焼付、エッチング加工の各作業から排出されるVOCの状況を把握し、排出量の削減に寄与できるような助言をしてほしい。
  • 簡易測定の結果からも、アルマイト写真焼付、エッチング加工からのVOC排出はほどんどないので、VOC削減はスクリーン印刷を対象とすればよい。
  • 主なVOC発生源は2箇所に特定されるので、以下の削減対策を検討されたい。
  • スクリーン印刷版をシンナー含有ウエスで洗浄する際、できる限り少量の溶剤で洗浄する工夫する。
  • インキ・機材を拭いた使用済みウエスのゴミ箱は、蓋をする又はポリ袋の開口を閉じる等を励行し、ポリ袋内の空間を減らす。
8 オフセット印刷
(枚葉)
印刷工程全般 印刷工場内のVOC排出状況を把握し、排出削減のための助言をしてほしい。
  • 作業中のVOC濃度はブランケット洗浄時に増加するが、他は低めである。
  • 2階の小型印刷機室のVOC濃度が他と比べて高い。
  • 代替IPAやエコタイプと称する湿し水からも高いVOC濃度が測定されたので、継続して低VOCタイプへの代替にチャレンジしてほしい。
  • 小型印刷機室については、小ロット作業を集中させることや、洗浄剤や洗浄回数の違いなど特異点を考慮し、作業手順、湿し水や洗浄剤の変更等を検討されたい。
  • 洗浄作業中はVOC濃度が上昇している。洗浄作業の標準化の検討、廃ウエスの密閉管理を実行されたい。
  • 自動洗浄装置では、液洗浄方式よりも布洗浄方式がVOC排出削減には有効。この場合、廃洗浄布の密閉管理が必要。
9 オフセット印刷
(輪転、枚葉)
印刷工程全般 印刷工場内のVOC排出状況を把握し、排出削減のための助言をしてほしい。
  • VOC室内濃度が、印刷室により大きく異なっている。これは、機械台数に対する室内容量、洗浄作業の頻度、換気回数の違いと推察される。
  • VOCを含有するインキを使用しているが、静置状態(室温)では揮発(濃度上昇)はほとんどなく、インキングローラー以降の温度上昇に伴いVOC濃度が増加している。ドライヤではVOC成分をほぼ100%放出するため、急激に濃度がアップしている。
  • ドライヤに直結した処理装置でVOCが適正に低減されている。
  • 洗浄作業に使用する不織布は、洗浄液を吹付けて使用しているのでVOC揮散が多い。プレ含浸タイプの不織布の導入を検討してはどうか。
  • 洗浄溶剤の使用量を削減する工夫、洗浄液の低VOC化、作業後の廃ウエスの密閉管理を実施されたい。
  • インキ、湿し水処理剤、洗浄剤の購入量、VOC含有量を把握し、改善目標を作成すれば、より進んだVOC削減活動となる。
10 電気機械部品製造 部品塗装 塗装ブースからのVOC排出量を削減したい。排風量の適正化、塗装効率の向上について助言してほしい。
  • VOC濃度は、塗装ブース近傍は強制排気しているので低濃度であるが、赤外線ランプによる乾燥時は自然拡散なので高濃度になっている。
  • 排気処理は、防塵フィルタのみではVOCを除去できないので、活性炭フィルタの追加を考慮してはどうか。
  • 塗装ブースの適正風量制御のためインバータの導入も有効。
  • 塗装ガンの運行速度が速すぎるので、0.5m/s程度に落としてはどうか。
  • 「タレ」「ナガレ」などの塗膜障害を起こさない程度にスプレーの低圧化を検討してはどうか。
  • 回転体の塗装では、ガンは固定し、被塗物を冶具で回転させると塗着効率が向上する。
  • 洗浄剤のジクロロメタンは、代替脱脂を検討するとともに、冷却管や洗浄後の排気処理も検討されたい。
  • プレコートによるカラー鋼板の採用など、自社での無塗装も検討してはどうか。
11 電子部品製造 焼成工程 電子部品の焼成の際にVOCを使用する。大気放出するVOCを安価で操作性よく削減する手法の助言してほしい。
  • 大気への削減手法としては、1.燃焼させる、2.回収する、3.代替品への転換が考えられるが、工程がバッチ法であること、溶剤が単一であること、比較的取扱量が少ないことから2.の回収(低温凝縮法)が推奨される。
  • 具体的には、以下の回収方法を検討されたい。
  • 生産工程で使用される密閉容器の空気取り入れ管に除湿器を追加する。
  • 排気管に冷却器を付加し、VOCを凝縮回収する。
12 オフセット印刷
(枚葉)
印刷工程全般 印刷工場内のVOC排出状況を把握し、排出削減のための助言をしてほしい。
  • VOC濃度は、印刷室が総じて高めで、最大は約500ppmCと高い。
  • 湿し水からのVOCは機上で数100ppmCあり、インキからの放散濃度を上回っており、印刷機からのVOC発生の主要因となっている。
  • 洗浄作業中のVOC濃度は数1000ppmCと高い。
  • 室内のVOC濃度上昇の原因は、インキ、湿し水、洗浄剤の室内残留、洗浄小口容器や廃ウエスの密閉管理不足、換気能力不足である。
  • 印刷インキは高沸点石油系が使用されているが、植物油インキやノンVOCインキへの転換も検討されたい。
  • 印刷機上部でのVOCは、湿し水からの要因が高い。使用している湿し水添加剤のVOC含有率は数10%あるので、湿し水の濃度管理、低VOC湿し水への転換を検討されたい。
  • 自動洗浄、手洗浄ともにVOC濃度が高いが、洗浄作業の標準化を検討してほしい。
  • ウエス廃棄ごみ箱の密閉管理(蓋閉め)の徹底、プレ含浸洗浄布の使用、低VOC洗浄剤への転換、廃洗浄剤の循環再生システムの導入を検討されたい。
  • 洗浄剤に含有しているジクロロメタンの量が多いので、他の物質への転換が望まれる。
13 金属・プラスチックフィルムの加工 印刷・ラミネート加工 グラビア印刷機、ドライラミネート機からのVOC排出量を把握し、排出量削減の手法を助言してほしい。
  • VOC濃度は、グラビア印刷機、ドライラミネート機とも局所排気付近で100ppmC程度、ウエスゴミ箱付近は数1000ppmCと高い。
  • グラビア印刷機、ドライラミネート機からの発散・拡散に対して、囲い式局所排気フードが設置されているため、VOCの室内への漏れはほとんどない。局所排気は、良好に機能している。
  • 使用済みウエスの収納箱からのVOC発散があるので、ごみ箱に蓋をするようにしていただきたい。ウエスを捨てる際、ポリ袋の空間を小さくしておくと発生を抑えることが出来る。
  • 工場の規模は規制対象ではないが、適切な処理・回収装置を設置することが望まれる。

抑制策 を説明する図

VOC排気を冷却して回収
廃ウエスの密閉(蓋閉め、ごみ袋の空間縮小)
記事ID:021-001-20231206-009314