第2回Tokyo-NbSアクションアワード 大規模法人部門:優秀賞 三菱地所レジデンス株式会社の取組

取組の紹介動画はこちら

https://youtu.be/dOoJ-_1dxgw?si=CKBFHJTfdwQhubxI

三菱地所レジデンス株式会社

技術環境部 グループマネージャー 井上直樹さん

人と生きものたちが街で共に暮らす

集合住宅のみどりが結ぶ生物多様性の拡がり

三菱地所レジデンスが推進する「BIO NET INITIATIVE(ビオ ネット イニシアチブ)」は、マンションの緑化に関する独自の指針を策定し、都市開発と生物多様性の保全を両立させる取組です。2010年の生物多様性COP10で掲げられた「愛知目標」を踏まえ、都市の中で失われつつある自然を機能させる仕組みとして2015年に始動しました。

「守る」「育てる」「つなぐ」「活かす」「減らす」の5つをテーマに明確な基準を設けて、物件の立地や規模を問わず、標準導入。10年が経った現在では全国で約270物件、都内では約150物件以上へと広がっています。

 
 

井上さん:当初は緑地を「作る」ことに主眼を置いていましたが、現在では、作ったみどりをいかに適切に「育て」ていくかということを重視しています。近年、社会全体で生物多様性やネイチャーポジティブという言葉がフォーカスされるようになり、取組をさらに加速させています。

その土地の歴史を未来へつなぐ

環境に調和した植栽が描く四季折々の景色

新しく作るマンションがその土地に溶け込むよう、歴史的背景や地域の潜在自然植生(人間の影響を一切停止したとき、気候や立地条件からその立地に生じると判定される自然植生)を紐解き、在来種を中心とした植栽となるよう設計。地域に馴染みのある樹種を選定することで、その場所ならではの景観を創り出しています。

また、化学肥料や農薬を極力使わず、樹木が伸びても安易に剪定を行わないなど、自然の力を活かした維持管理を意識。生きものにも人間にも心地よい空間づくりを目指すことで、季節の移ろいを感じられる自然がその地に生きています。

 
 

井上さん:私たちが大切にしているのは、どこにでもあるみどりではなく、その場所にしかないみどり。板橋区の物件(ザ・パークハウス 板橋大山大楠ノ杜)では、かつてのお屋敷跡であるその場所に佇んでいたクスノキをシンボルとして活かし、サクラやカキノキなども残しました。庭園内にはお稲荷さんが祀られており、ほとりにある建物も明治期からあった蔵で、今は多目的スペースとして活用しています。

 

ビッグデータを活用して数値化し

ネイチャーポジティブ効果を定量的に実証

生物多様性のビッグデータを活用することにより、このプロジェクトを導入した物件における植物や生きもの定量化を実現。未導入物件との比較でネイチャーポジティブ効果が証明されたことで、取組についての説明がしやすくなったと井上さんは語ります。

 

 
 

また、シジュウカラや、アオスジアゲハなどのチョウを指標種として設定し、マンションの緑地と街に点在するみどりを線でつなぎ、都市全体の生態系を豊かにすることを目指しています。

井上さん:マンションの緑地の規模が小さくても、周辺の公園や街路樹などとみどりがつながっていくことで、生きものたちが移動する際の「中継地」として機能します。まさに街の中に「鳥の道」を作るような感覚ですね。

 
 

居住者と管理人が共に育む

自然との共生がもたらすウェルビーイング

物件内で自然観察会などを開催し、居住者の方々に自分たちの住まいが生きものとつながっているということを身近に感じていただく機会も創出しています。

井上さん:参加した子どもたちが夢中になって、チョウなどの昆虫を探し、鳥を追いかける様子が見られます。自分の暮らしのすぐそばにある自然に触れることで、家族の会話や居住者同士の交流が生まれ、ウェルビーイングの向上やコミュニティ形成へとつながっています。

緑地の維持管理には、最前線での担い手である管理会社とスタッフ(管理人)の深い理解と協力が不可欠。そこで、定期的な勉強会を通じて意識の共有を図る取組も強化していると語ります。

井上さん:私たちはマンションを開発し販売する立場なので、作る、維持管理する、それぞれの立場の企業と連携することが非常に重要です。そこで、「BIO NET INITIATIVE(ビオ ネット イニシアチブ)」の考え方や生物多様性の必要性などについて、管理会社向けの説明会を実施してきました。昨年からは居住者の方との日常的な接点が多い管理人向けの個別の勉強会も開催。マンション緑地についてレクチャーし、居住者へ伝え広めてもらうような取組にも力を入れています。

 
 

「都心に住みながら自然を身近に感じられる」、「心安らぐ空間が身近にあるのは嬉しい」という居住者からの声。身近な自然は居住者のウェルビーイングの向上をもたらすだけでなく、管理人や居住者どうしの交流を生み出し、さらには長期的な物件の資産価値向上にも寄与しています。都市化が進む現代において、作って終わりではない緑地。そのみどりを育て続けるための地道な努力がそこにはあります。

生物多様性を紡ぐみどりの拠点として

「人と自然が共生する街づくり」を推進

マンションの敷地内の限られたみどりでも、質を高めてエリア規模でネットワーク化していく継続的な取組によって、都市開発と生物多様性の両立の可能性を示した三菱地所レジデンスの「BIO NET INITIATIVE(ビオ ネット イニシアチブ)」。

身近な場所で自然と向き合う機会を創出することが、未来の暮らしへとつながっていくことを私たちに伝えています。

井上さん:マンション開発においては、効率や容積率だけを追い求めるのではなく、みどりがあることで得られる心の豊かさや資産価値を定量的に示していくことも重要になります。ESGやTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)などにもつながるこの考えが、これからのデベロッパーに求められるのではないかと思っています。

効果が表れるには時間がかかりますが、みどりのネットワークは少しずつ、でも確実に都市の風景を変えています。今回の受賞を後押しに、「人と自然が共生する街づくり」をさらに進化させ、次世代へ受け継がれる豊かな東京の都市環境の実現に貢献していきたいと考えています。

 
 

 

 


 

記事ID:021-001-20260616-017796