第2回Tokyo-NbSアクションアワード 中小規模法人部門:優秀賞 生活協同組合パルシステム東京の取組
取組の紹介動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=-UR3nbIabjg
生活協同組合パルシステム東京
政策・環境推進部 部長 福島崇さん
都心からわずか30分圏内の里山を再生
貴重な自然を次世代へとつなぐための大きな決断
新宿から電車で約30分、最寄駅から歩いて10~15分という都心近郊にありながら、住宅街を抜けて里山に向かって足を踏み入れると目の前に広がる自然。ここに、生活協同組合パルシステム東京の自然交流の場「いなぎめぐみの里山」があります。
今から遡ること約20年。「いなぎめぐみの里山」は、急速に進む宅地開発による里山の消失を懸念していた地元住民と、組合員向けの自然体験の場を探していたパルシステム東京の想いが一致したことから、同組合が土地を借り受けて2004年に開設されました。その後、2017年に土地を購入。その決断には、事業と活動の両輪で成り立っている生協として「これまで育んできたこの場所をこれからも大事にしていきたい」という強い想いがあったと福島さんは語ります。
福島さん:私たちは生協ですから、組合員の皆さまからお預かりした大切な出資金が活動資金となります。その貴重な資金を投じての土地購入に対しては、組合員の深い理解と将来に向けた還元を考えて慎重な議論を重ねました。この決断は今日の活動のゆるぎない土台となっています。
2022年には管理を共にしていた団体が解散するという危機に直面。存続も危ぶまれるような状況の中で、地域のつながりから、地元で活動する新たなパートナーの株式会社nuucotoと出会います。そうして、翌2023年に新しい管理体制がスタート。この里山を交流スペースと位置づけて、積極的な活用を目指した取組が加速していきました。
自然を守ることから里山を活かすことへ
インフラ整備で管理や活用の利便性を向上
イベントなどの企画を増やすことで里山に訪れる人が多くなった一方、環境面の整備が必要になってきたと福島さんは話します。
福島さん:新たなパートナーとの出会いから、より多くの方に安心してご利用いただけるよう、特に子どもや女性の皆さまの利便性向上を目指して、小屋やトイレなどの設備の改修に着手してもらいました。トイレは、「暗くて子どもが入りづらい」といった声を受けて、明るい設備へとリニューアルしました。念願だった水道の引き込み工事も完了間近です。これまでは水をタンクに入れて運び込んでいましたが、蛇口から水が出るようになることで、活動のしやすさは格段に向上しますね。特に近年の猛暑を考えると、手洗いや体を冷やすためにすぐに水が使える環境は、参加者の皆さまの健康管理の面でも重要な改善になると考えています。
また、里山の生態系と環境機能を維持し向上させるためには、人の手による継続的な手入れが欠かせません。大がかりな作業は専門業者にお願いしていますが、雑木林や竹林の管理と草刈りや畑の維持などは管理団体の株式会社nuucotoが行っています。さらに、今年度から新たに職員がボランティアとして汗を流す自主的な取組も始まりました。
人の手が入らなくなってアズマネザサが生い茂って荒廃していた里山も、継続的な手入れをすることで再び豊かな自然を取り戻すことができたと語る福島さん。花が咲かなくなっていた樹木も、手入れをすることで新芽が吹き出し、再び豊かな彩りを取り戻すこともありました。パルシステム東京と地元住民の方々の力で20年余りの年月をかけて整備・再生され、今では多くの人が交流する場として活用されています。
五感で学ぶ「食育」と「保全」
里山での自然体験がもたらす行動変容
里山の畑で収穫した野菜をトッピングして焼く「ピザ作り」や「タケノコ掘り」など、生協ならではの「食」を切り口にした体験が高い支持を得ているという里山でのイベント。単なるレジャーではなく、自然を五感で感じる食育の場にもなっています。
福島さん:ここで収穫した野菜を食べて「嫌いだった野菜が食べられるようになった」という声を耳にした時は、子どもたちの実体験が活きているということを確信できて、とても嬉しかったですね。
「タケノコ掘り」は、20名ほどの定員に対して100組以上の応募がある毎年好評のイベントとなっています。この企画では竹の子を掘って持ち帰られるという楽しさだけでなく、竹の子を掘る理由や里山を手入れすることの重要性も伝えています。今期からは、森林保全を主体とした組合員向けの本格的な竹の間伐体験企画を新たに始めました。
組合員同士の交流が必然的に生まれ、イベントをきっかけに訪れた組合員が、一般の方も自由に利用できる「里山開放日」に再び足を運んでくれることもあると福島さんは声を弾ませます。
デジタルを活用し作業記録や状況を可視化
客観的で的確な保全活動を促進
最近では、経験則に頼っていた管理をデジタル化して作業の記録を蓄積するなど、取組の進め方をアップデートして保全活動が行われています。
福島さん:これまでは保全活動の詳細が記録されてきませんでした。そこで、デジタルマップなどを活用して、作業などの記録をデータで残すことを今年度から始めています。アバウトだった作業の可視化なども行っているので、それらを今後の計画にも活かしていきたいと考えています。
里山を「竹林」「畑」「雑木林」といったゾーンに分けて、モニタリング調査も実施しました。定点観測では、タヌキなどの動物や、絶滅危惧種の植物の生育も確認されています。また、外来種により失われた植生を、土の中に眠る種(埋土種子)から再生させる取組を行うなど、エリアごとの適切な管理方法について、昨年まで話し合いを重ねた結果を実現していくために、実施可能なエリアから着手しています。
世代を超えて続く里山を目指して
地域住民と組合員と職員が共に守り育てる
都市部で自然に触れる機会が少ない子どもたちに、自然に触れる場を提供している「いなぎめぐみの里山」。今回の受賞によって、より多くの組合員や職員が足を運ぶきっかけになればと福島さんは期待を寄せます。
福島さん:パルシステム東京が所有・運営していますが、主体はここに集う組合員の皆さまと、地域住民の方々だと考えています。だからこそ、イベントに参加するだけでなく、維持管理や運営に関わる人が増えていけばいいなと思います。ここで遊んだ子どもたちが大人になって、自分の家族を連れて再び訪れてくれる。そういった世代を超えたつながりが生まれることも、この先あると嬉しいですね。
地域住民と組合員、そして職員が一体となって、この里山をこれからも大切に守り育てていくという想いを大切に。この里山がいつまでも続いていくことを願って、自然とともにこれからも活動していきます。