第2回Tokyo-NbSアクションアワード 中小規模法人部門:最優秀賞 株式会社東京チェンソーズの取組
取組の紹介動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=INfPpI1nxPc
株式会社東京チェンソーズ
森林サービス事業部 林英子さん
コミュニケーション事業部 部長 木田正人さん
樹齢100年の森を見据えた森林の価値最大化
1本の木をまるごと活かすという挑戦
東京の西部に位置する檜原村は、面積の90%以上を森林が占める人口が2,000人に満たない山村です。2006年からこの地を拠点に活動する東京チェンソーズが整備を行った森林の総面積は、約1,000ha(東京ドーム約200個分)に及び、東京の森林環境改善に大きく寄与しています。
かつての林業では、木材として市場に出せない枝や根、曲がった部位は不要なものとして扱われてきました。同社はこれらを「未利用材」ではなく「唯一無二の素材」と捉え直し、1本の木をまるごと活用するという独自の戦略を展開。持続可能な森づくりと地域経済の自立を両立させています。
創業メンバーの一人である木田さんは、森林の価値を最大化するという考えに至った当時を振り返ります。
木田さん:私たちが林業に就いた2000年代初め頃、日本の林業は大きな壁にぶつかっていました。丸太の価格は低迷して事業は補助金頼り。公共の仕事は安定しているものの将来的に不確実で伸び代は感じられず、活気があるとは言えませんでした。2006年、地元の森林組合からの独立を機に、補助金のみに頼るのではなく、森林の価値を最大化することで成り立つ、より付加価値の高い森林経営を考えたのです。
まずは働き手である自分たちの就労環境を安定させ、顔の見える関係性の中で、工夫して木材や森を中心とした豊かな社会を実現することを目指しました。
現在、檜原村で管理する約33haの森林を中心に、素材生産から販売、サービスまでを一貫して行う体制を整えています。
未利用材に新たな命を吹き込み
根から先端まで余すことなく活用
1本の木を伐採しても、市場に出せる丸太の部分は全体の半分程度。残りの半分は使われないというのがこれまでの常識でした。
林さん:今まで使われていなかった部分に価値を見出すことで、1本の木から得られる収益を上げ、それを次の森の整備費用に充てる循環を作っています。例えば、通常は山に残される根株を掘り出し、泥を落として樹皮を剥き、形を整え、造形美を活かしたオブジェや家具の脚として販売しています。また、曲がった先端や細い枝は、おもちゃの材料や店舗の什器として活用しています。
自社ブランドでは、木の個性を活かしたプロダクトを展開するほか、セレクトショップとのコラボやワークショップなども開催。出張型木育イベント「森デリバリー」を通じて、都市部の消費者に直接木や森の価値を届けるといった活動も行っています。
国際的森林認証「FSC®」を取得し
生物多様性の保全や水資源の保護にも寄与
2017年には、国際的な森林管理の認証である「FSC®」を取得。現在、自社管理地のうち約26haが認証範囲となっています。
木田さん:私たちの活動は、環境・社会・経済のバランスを取った上に成り立っています。それらを担保し、自社の森林管理の基準とするために取得したのがFSC®認証です。
東京チェンソーズの森林整備における考え方の一つは、むやみに木を切りすぎないこと。今は「使う分を切っている」という感じですね。「将来どの木を残すか」ということを考えて、間伐しています。適切に間伐をすると、森の中が明るくなるんですね。そうすると日が差して下草も生えてきて、動植物も息づきます。逆に手を入れずあえて暗い部分を残すことで、そうした環境を好む動植物も集まってきます。また、雨が降った時の土砂の流出を防ぐなど、様々な好影響があります。
※「FSC®認証」とは、環境保全の点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的に持続可能な、適切な森林管理を広めるための国際的な認証制度のこと。
都市部に暮らす人たちの檜原村での体験が
自分の生活と自然を結びつけるきっかけに
山を、木を生産する場所としてだけでなく、都市部の人々が自然に親しみ、学ぶフィールドとしても活かしている東京チェンソーズ。昨年実施した企業研修は年間10件に及び、多くの方が訪れています。
木田さん:私たちは、木を切って製品化して売るだけでなく、森林空間を活用する取組も行っています。新入社員研修などで訪れる都心の企業の方々には、山に入って木に触れるなどの体験をしていただいています。
街で働く人々にとって、たとえば身近にある机は単なる家具かもしれません。でも、山に来ればそれがかつては水を蓄え、土砂崩れを防いでいた生きものであったことに気づいていただけるのではないかと思っています。
ほかにも、山をシェアする会員制アウトドアフィールドを展開。都市の住民が日常的に森に関われる仕組みを作っていると言います。
林さん:多摩川の下流で暮らす人々と、上流の森は密接につながっている。その実感を伴う学びを提供することで、参加者の多くが自分の行動を変えるヒントを得ていただけているのではないかと思います。こうして、森林を体験していただくことが、この先の東京の森と街を守る力にもなっていくと確信しています。
檜原村からつながる流域が一丸となって
森を健全に保つことが東京の未来を作り出す
この受賞によって、これまで林業に関心がなかった街の方々とのつながりがより広がっていくことを期待したいと話す木田さんと林さん。
林さん:「東京都の山村から」という情報発信力を活かし、私たちの取組が全国の林業の活性化にも寄与できればと考えています。
東京の森から生まれる1本の木をまるごと大切に使い切ることで、生み出される様々な価値、そこからつながっていく未来。東京チェンソーズは、森から街へと広がる流域をつなぐ、まさに源流としての役割を担い、これからも東京に自然の価値の循環をもたらし続けます。