Saving Materials × 大成建設株式会社
- 更新日
日々の生活で感じる「もったいない」と思う気持ち、大切にしたいですね。食品ロスやプラスチックの削減、省エネなどに取り組む「チームもったいない」の活動に参加する企業の取組について、随時紹介していきます。
<建設現場で不要となった三角コーンの再資源化に取り組む団体を紹介>
大成建設株式会社 クリーンエネルギー・環境事業推進本部 資源循環技術部 環境再生・資源循環技術室
課長 三野香里さん
課長代理 長谷川由布子さん
<左:長谷川由布子さん 右:三野香里さん>
150年を超える歴史をもち、土木・建築を中心に事業を展開する大成建設株式会社。日本全国に土木・建築現場を抱える同社は、建設現場で不要となった三角コーンの再資源化に向けた実証試験に取り組んでいます。この活動について、クリーンエネルギー・環境事業推進本部のお二方にお話を伺いました。
三角コーンの現状と再資源の可能性
安全用品として使用されている三角コーンは、建設現場では消耗品として取り扱われ、工事完成後にそのほとんどが再利用されることなく、多くて年間数千個が廃棄されていると想定されます。しかし、三角コーンは本来リサイクル可能なプラスチック素材で製造されており、適切に回収すれば再資源化が可能です。
大成建設はプラスチック成形メーカーの株式会社八木熊とともに、2023年10月より建設現場で不要となった三角コーンの再資源化に関する実証試験を開始しました。
三野さん「都内の建設現場から約200個の三角コーンを回収し、再生三角コーンを約70個製造しました。現在、実際に現場で使用し、紫外線劣化や気温変化等で壊れないか、確認しています。」
「大成建設グループは、循環型社会の実現に向けて取り組んでおり、2050年までに建設副産物(*1)の最終処分量をゼロにすることを目標に掲げています。その一環として、リサイクル率が他の産業廃棄物に比べて低い廃プラスチックの対策に着手しました。例えば、建設業の主要な産業廃棄物であるコンクリートがらはリサイクル率100%ですが、廃プラスチック類は66.7%にとどまっています。(*2)
その第一歩として、建設現場の象徴である三角コーンのリサイクルに取り組むことになりました。」
(*1)建築副産物とは、建設工事に伴い副次的に得られた全ての物品のことです。具体的には、産業廃棄物(コンクリート塊や建設発生木材)に、建設発生土と金属くずを加えたものです。
(*2)大成建設2023年環境データより
建設現場における課題と取り組み
建設現場では工事車両の出入りが頻繁にあり、廃材の回収にはスケジュール調整が必要です。また、使用中に破損する三角コーンを単体で回収するのは困難で、結果的に「廃プラスチック類」としてまとめて廃棄されるケースが多いのが実情です。今回は、建設現場の竣工に合わせて200個の三角コーンを回収することができました。
<実際に現場で使用されている再生三角コーン>
<2024年環境月間ポスター>
三野さん「現場では、使用済み三角コーンは産業廃棄物としての認識が強く、資源循環の意識がまだ十分に浸透していません。そのため、6月の環境月間に啓発ポスターの掲示やeラーニングを実施し、意識向上に努めています。また、廃棄物置き場に管理者を配置し、分別の徹底を進めています。今後は梱包材などの細分化を進め、資源としての活用を広げていきたいと考えています。」
三角コーンの再生利用に際しては、株式会社八木熊と協働しています。
長谷川さん「八木熊さんはもともと安全資材の製造・販売を手がけ、近年はプラスチックのリサイクルにも注力されています。当社の「建設現場」と「廃プラスチックのリサイクル率向上」というテーマが合致したことから、今回の協働が実現しました」
「最大の課題は、屋外使用によるプラスチックの紫外線劣化です。今回、初めてのリサイクルを実施しましたが、今後の水平リサイクルを考えると、この劣化対策が重要になります。八木熊さんは、分子量が低下したプラスチックを再結合させ、材質の劣化を抑える技術を持っています。その技術を活用しながら、より耐久性の高い再生三角コーンの開発を進めていきたいと考えています」
<再生三角コーンにはひと目で識別・管理が可能なステッカーが貼付される>
2050年のCO2排出量ゼロを目指して
今回の実証実験で製造した再生三角コーンは、製造後に物理特性(引張強度、伸び等)の評価を経て、大成建設の技術センターや建設現場で実際に約1年間使用し、耐候性(*3)などを検証します。その後、再び回収して再資源化のうえ、建設現場での利用を試みる予定です。これらの工程を繰り返すことで、三角コーンのリサイクルループの構築を目指します。
(*3)「耐候性」とは、プラスチックや塗料、繊維、有機素材等の工業製品が太陽光・温度・雨等の屋外の自然環境に耐えうる性質であることです。
<三角コーンのリサイクルイメージ図>
使用済み三角コーン回収 破砕 原料ペレット精製 再生三角コーン製造
長谷川さん「実証試験を進める中で、回収や製造にかかるコストが非常に高いことがわかりました。そのままでは再生品として販売しても、価格が高すぎて購入が難しくなってしまいます。そこで、現在はコスト低減の方法を模索しているところです。また、再生品の普及には、購入者にとってのインセンティブも重要です。ブランド化なども視野に入れつつ、価格を抑える努力をしながら、多少高くても選んでもらえる仕組みを考えていきたいですね」
今回の実証試験では、主原料として再資源化材を利用することで、原材料調達から製造まで三角コーン1トン当たり3.84トンのCo2削減が見込まれています。同社は長期環境目標の一環としてCO2排出量の削減目標を設定しており、2030年までにスコープ1および2の合計で42%削減、スコープ3で25%削減を目指しています。さらに、2050年には排出量ゼロという高い目標を掲げています。
三野さん「土木学会や廃棄物資源循環学会で発表した際には、同業他社や他業界から多くの質問をいただき、関心の高さを実感しました。単独では難しい取り組みですが、建設現場には多くの企業が関わるため、他社とも連携し、効率的な回収の仕組みを構築できればと考えています。もちろん、ストックヤードの確保など新たな課題も出てきますが、一つひとつ解決していきたいですね。また、展示会などでも積極的に情報発信しm業界全体での取り組みにつなげていきたいと思います」
3R+Renewableの実践で、サーキュラーエコノミーを実現
今後は、同社は三角コーン以外の「現場から発生する廃プラスチック類の再資源化」にも順次取り組んでいく方針です。また廃プラスチック類以外の廃棄物、例えば、鉄やアルミ、ガラスなども、引き続き取り組んでいきます。事業活動や社会から発生するさまざまな副産物に新たな価値を加えて資源の効率的・循環的な利用(3R+Renewable)を実践することで、サーキュラーエコノミーの実現に貢献することを目標に掲げています。
身近な資源の再生を考えることが、循環型社会への第一歩です。私たち一人ひとりができることから取り組み、その輪を広げていきませんか?