Saving Food×合同会社クアッガ

更新日

日々の生活で感じる「もったいない」と思う気持ち、大切にしたいですね。食品ロスやプラスチックの削減、省エネなどに取り組む「チームもったいない」の活動に参加する企業の取組について、随時紹介していきます。

<パン廃棄の削減サービスを運営する企業を紹介>

「合同会社クアッガ」 代表 斉藤優也さん

お得に買えて廃棄を減らせる

パン好きにもパン屋さんにも嬉しい仕組み

パン屋で出たロスパンをお得な価格で販売し消費者に届ける、パン廃棄の削減サービス「rebake(リベイク)」を運営する合同会社クアッガ。2018年12月にサービスをスタートさせ、2019年8月の時点で登録店は約200店、ユーザーは約1万6,000人という広がりを見せています。代表の斉藤優也さんにお話を伺いました。

パン屋さんは知らないけれど

パン好きはみんな普通に冷凍して食べている

斉藤さんがこの事業を始めたのは、パン屋ではどうしても廃棄が出るという事実を知ったから。斉藤さんが200店舗ほどのパン屋を直接訪れて聞き取り調査をしたところ、9割以上のパン屋さんが廃棄に頭を悩ませていました。それならとスタートした「rebake」のサービスですが、当初はパン屋からの賛同を得ることに苦労したそうです。

「rebake」ホームページ

『「rebake」ではパン屋で出たロスパンを冷凍してユーザーに配送するのですが、最初は衛生面の不安から通販はやりたくないという声が多くありました。そもそも毎日パンを作って販売しているパン屋さんは、パンを冷凍したことがないのです。一方、パン好きの人はパンを買ってその日のうちに食べられない分は冷凍するのが当たり前だから、冷凍パンを食べることにほとんど抵抗がありません。ですので、パン屋さんには「一度、パンを冷凍して食べてみてください」とお願いして、理解を得ていきました』

サイトをオープンしてすぐに、知名度の高いサイトで紹介されたり、SNSで拡散されて広く知られるようになりました。

『オーナー兼職人が自分で作ったものを自分で捨てるのも当然辛いですが、規模の大きなパン屋では、店長が職人の作ってくれたパンを捨ててしまうのは申し訳ないと感じていました。全ての関係者のモチベーションを下げていたパンの廃棄を減らせるこのサービスは、パン屋さんからはとても喜んでもらっています。ユーザーからも、美味しいパンを安く買えてロスパンを減らせるなんて、みんなにとって良いことですね、という声を頂いています』

大学時代の恩師の教えに影響を受け

経済の仕組みで自然を守ることを決意

田舎が北海道で、豊かな自然に触れる機会が多かった斉藤さん。子どもの頃から自然や生物への関心が高く、大学では生態学を専攻しました。

『大学のとき憧れていた先生の研究室に入り学んだことは、基本的に環境や農業は経済とは切り離せないということでした。それをきっかけに、農作物や自然を持続可能な形で生かしていく経済の仕組みをつくれないか、と、思うようになったのです』

ユーザーの中には「rebake」からパンの廃棄問題を知った人もいます。斉藤さんは各地のパンマルシェにも出店しロスパンを販売していますが、ロスパン=売れ残りというネガティブな印象を持つ消費者は少なく、この取組が人々に受け入れられていることを感じているそうです。

『「rebake」を使って、パン屋さんで廃棄がたくさん出ることを知ったので、自分で買ったパンは最後までちゃんと食べ切ろうと思いました、という声を頂いたこともあります。僕たちがマルシェでロスパンを販売していても、すごく良いね、と、言っていただけることが多いです。また、こだわって作っているパンほど1週間は持つものが多いし、天然酵母のパン屋さんでは3日置いて食べて下さい、というところもあって、実は“焼きたてが一番美味しい”というパンばかりではないのです』

パン屋さんの素材への想いや情熱を

多くの人に知って欲しい

ユーザーに届ける際に、「3日目のパンの美味しい食べ方」などの情報や感謝の気持ちを手紙として添えているパン屋もあるそうです。パンごとの食べ頃や美味しく最後まで食べきるコツなど、新たなパンの知識を得ることができたり、こだわって作った人の想いが感じられると、食べたときの感動もひとしおではないでしょうか。

「rebake」ではユーザーからの写真やコメントも紹介しています

『この仕事を通じて知ったことは、素材をとても大切にしていて真摯にパン作りに励んでいるパン屋さんがたくさんいらっしゃるということです。彼らは仕事がとても忙しくお休みもほとんどないので、自ら情報発信する機会が少ないのですが、素晴らしいパン屋さんがたくさんいることをもっと多くの人に知ってもらいたいですね』

斉藤さんは、「チームもったいない」の活動に参加したことで、より多くの人やパン屋さんに「rebake」について知ってもらえたと感じているそうです。

『直接お会いできない地方のパン屋さんは、この人は一体何者なんだ? と思うでしょうし、東京都の活動に参加したことで、安心して登録してくれるお店が増えるのは嬉しいです。「rebake」では来年には700店舗の登録を目指しています。また、パン屋さんとユーザーさんのマッチングをして、食パン好きやハード系好きなど、欲しい人に欲しいパンが届くようなサービスも始められたら良いなと思っています』

パンを作る側もパンを買う側も、パンが好きなのは皆同じ。美味しいパンを生み出す自然や作り手に感謝しながら、ひとつひとつ大切に味わいたいですね。みなさんも、日頃から食べ物を残さず食べる、捨てることにならないように食材を買うなど、できることから始めてみましょう。

記事ID:021-001-20231206-008943