一般財団法人セブン-イレブン記念財団の取組
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八王子市に位置する「高尾の森自然学校」は、100年先を見据えた里地里山づくりを目指し、地域の人たちと共に多彩な取組を展開しています。今回は開校から10年をかけて、人がにぎわい、多くの生きものが生息・生育する里地里山を創り上げてきた「高尾の森自然学校」を訪問し、自然学校代表の後藤さんにお話を伺いました。
■放置された森から地域と自然をつなぐ拠点へ
―セブン-イレブン記念財団が高尾の森自然学校の活動を始めた経緯について教えてください。
この高尾の森自然学校がある場所は、昔は周りに田畑が広がり、そこへ薪や落ち葉の堆肥などを供給する里山としての機能を果たしていた森でした。時代の変化とともに使われなくなっていたところを、セブン-イレブン記念財団と東京都の協定により、2015年4月に高尾の森自然学校として開校しました。
人と自然、自然環境と地域社会の共存共栄を自然から学ぶことを理念として、単に森を利用するだけではなく、人や地域と自然とのつながりを学ぶことができる森を目指しています。八王子市に住んでいる人の中には、昔から住んでいる人もいれば、移住してきたばかりの人もいます。そういった方々の居場所づくりや子どもたちの遊び場として機能する森になると良いと思っています。
―30年以上、人の手があまり入っていなかったとのことですが、開校当時の森はどのような様子だったのでしょうか。
昔は森の中に道もあったようですが、開校前は真っ暗な森で、それもあるかわからないような状態でした。そこで、森林整備として、まずは道を開拓するところから始まりました。開校の半年前くらいから「セブンの森」や「森のお手入れボランティア」としてボランティアを募って、地域の方も一緒に道づくりに取り組みました。開校後は森林整備をしつつ、毎週なにかしらのプログラムを開催していました。
■10年に渡る森林整備の過程とその成果
―道の開拓は今も続いているのでしょうか。
道はもうほとんど作り終わっているところで、今はつくった道からさらに林内の整備に入って、里山らしく明るい環境をつくる取組をしています。最近は、沢の集水域で雨水が浸透しやすくなるように、間伐や下草刈りなどの整備を中心に行っています。開校してからの10年間で保全ゾーン以外の3分の2くらいは一通り手を入れ終わりました。そのほかに、今までにつくってきた道や階段の点検整備も継続しています。
―森林整備の活動に参加されている方はどのような雰囲気ですか。
作業後にはうっそうとしていた森が明るくなり、環境がよくなったことが目に見えるので、達成感や気持ちのよさを感じている方が多いと思います。それから、普段の活動や年2回の「森の感謝Day」などを通して、参加者の間でコミュニティが生まれています。
現在の森林整備ボランティアは、自然学校側で整備方針や活動日、作業内容を決めていますが、将来的にはボランティアのグループができて、ボランティアの人たちが自分たちで自主的に森林整備を計画して作業するような取組もしてみたいですね。
―10年にわたる森林整備によって、森の中の生きものはだいぶ変化してきたのではないでしょうか。
生きもののモニタリング調査は2018年から実施しており、森林整備によって開けた明るい環境になった場所では、ノウサギやそれを食べるキツネなどの里山らしい生きものが増えてきていますね。植物も、エビネやリンドウなど、林内が明るくなったことでみられる種数が増えてきているんですよ。生物相の変化という形で自分たちの整備活動の成果が可視化されるので、ボランティアの方々のモチベーションにもつながっていると思います。
―森林整備ボランティアの他にも、様々なプログラムに挑戦されているとお聞きしました。
最初は生きもの観察と整備体験が中心でしたが、ホタルの観察会や整備活動で発生した材を活用したものづくり体験、草木染めなど昔からの伝統を伝えるようなプログラムなど、参加者の声を参考にしながら活動を広げてきました。近年の取組としては、森から海までのつながりを体験してもらう「森里川海」連続プログラムがあります。高尾の森を守ることがひいては東京湾を守ることにつながることを現地で学んでもらっています。
その他にも、自然に興味の無い人や小さなお子さんが森に触れる機会を作りたくて始めた「森の音楽祭」、小さなお子さん向けの竹等を使った楽器作りや、大人を対象として夜に開催する「焚き火とJazz」などに取り組んでいます。
私たちは、自然を守るためには自分たちの生活の中に自然の必要性を感じてもらうことが重要だと思っています。昔の薪を使っていた生活に戻るわけにはいかないですが、現代で感じられる自然の価値に触れて、生活の一部に自然があることを感じてもらうために、まずは森を活用して自然を楽しんでもらうことから始めています。
■100年先も愛される森づくり
―これまでに多様な取組をされてきたと思いますが、今後さらに広めていきたい取組はありますか。
地元の人との協働に力を入れていますが、まだまだ自然学校の認知度は高くないと感じています。そこで、自然学校の活動に参加・賛同してもらえる人を増やすための取組の一つとして、「森さんぽ」という無料の観察会を始めました。これは事前申し込みも不要で毎月開催しているので、普段周辺を散歩されている方など、近隣の方がふらっと森に立ち寄れるきっかけになればと思っています。
また、学校やPTAとのつながりの中で、学校で育てている蚕の餌になる桑の葉が手に入りにくいとの話が持ち上がり、「くわのはプロジェクト」がスタートしました。自然学校の中で桑を育て、地域の小学生が桑や蚕について学びながら桑の葉を採取し、学校の蚕の餌として利用してもらう活動を計画しています。ゆくゆくは、中学校のクラブ活動やボランティア活動で桑畑を作っていく流れになるといいなと考えています。
―最後に、これからの取組で目指していく目標や将来像などがあれば教えてください。
高尾の森自然学校では、「100年後を見据えた生きものが住みやすい里地里山環境の再生」を目標としています。100年後を掲げたのは、里山が江戸時代以前から持続的に使われ続けてきたように、この森で新しい価値を見つけ出しながら、この先100年、200年先もずっと使われ続ける森を目指したい、という想いからです。
生きものの多様性が高く、昔からの里山らしい環境が維持されて、そこに様々な人が集い、いろんな価値を見出し、つくり出す、そういった森が理想だと思っています。この森を通じて地域とのつながりを広げ、そのつながりの中で見えてくる地域の課題を自然学校の中で解決できるような取組をしていきたいと考えています。
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