有限会社フルールの取組

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PM2.5や光化学オキシダントを低減させていくため、その原因物質である窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)の削減に取り組むClear Skyサポーターを紹介します。

 

今回インタビュアーを務めてくださったのは、元AKB48メンバーで女優、気象予報士の資格ももつ武藤十夢さんです。

有限会社フルール

東京都大田区にある有限会社フルール。

昭和38年創業のクリーニング会社で大田区を中心にクリーニング店14店舗を展開し、最高レベルの仕上がりを提供しています。特に染み抜きでは「ほかでは無理と言われたものもフルールならきれいになる」と評判の高い技術を持っています。

 

〈フルールが運営するリッツクリーニング 池上店〉

〈社長 佐藤昭仁さん〉

こちらでは大気環境改善のため、どんな取り組みを行なっているのですか?

弊社では溶剤回収型の(VOCの放出が少ない)乾燥機を導入しています。業界に先駆けて、20年程前からドライクリーニングにおける乾燥機は、すべて高効率の溶剤回収型のものにしています。

■VOCってなに?
VOC=揮発性有機化合物のことです。
「シンナー」や「ガソリン」、「除光液」など私たちの身の回りにもVOCが含まれているものがたくさんあります。VOCは蒸発しやすく、大気中で気体となり、光化学オキシダントやPM2.5の原因の1つとなります。

乾燥機からVOCが出ているのですか?

実はたくさん出ています。有機溶剤を使用したドライクリーニングでは主だって石油系溶剤が使われており、乾燥工程で対策なしに乾燥を行ってしまうと大気に石油系溶剤を放出させてしまうのです。この溶剤がVOCに該当します。弊社では溶剤回収型の乾燥機を導入しておりますが、この乾燥機は普通の乾燥機と違い、石油溶剤の消費量が通常の96%(山本製作所のHP調べ)削減されています。

〈溶剤回収型の乾燥機〉

―クリーニングでもVOCが排出されているのは初耳でしたが、石油溶剤の96%が削減されているのはとてもエコな取り組みですね。

なぜその乾燥機を導入しようと決めたのですか?

日本政府主導の「チーム・マイナス6%」という温暖化を防止するエコプロジェクトがあります。クリーニング企業として、エコプロジェクトにどうやったら関係できるかということを考えたときに、VOC削減に繋がる乾燥機を導入しようと決めました。

―実際に工場内を見せていただくことに・・・

〈フルールの工場内の様子〉

こちら工場なのに、結構涼しいですね

実はクーリック除湿冷風機というものを自社で開発して工場の冷却化、さらには節電にも成功したのです。

この機械を使用して、最高で40度以上あった真夏の工場内を30度以下に保たれるようにしています。エアコンの使用が0というわけではないですが、だいぶエアコンの使用量が減り節電にもつながっています。

〈こちらがクーリック除湿冷風機〉

ちなみにですが、エアコンだけでは室温は下げられないものなのでしょうか?

スチームアイロンを使用する工場内は温度が下がりにくく、エアコン等で快適な環境を手に入れるには弊社の工場では500馬力が必要で、エアコンだけでは室温を下げるのには限界があります。

クーリック除湿冷風機はエアコンと比べて、16倍の冷房能力があり、電気代も節約することができます。

※COP=1キロワットあたり、どれくらい冷やしたり温めたりできるかの能力
エアコンはCOP 2.5である一方、クーリックはCOP 40となります。
また、エアコンで使用する熱交換器(室外機)は地球環境に良くないですが、クーリックは室外機が無いのです

クーリック除湿冷風機が導入されていかがですか?

暑さが改善されてうれしいという意見が社内から多く上がりました。

また、導入後に気づいたことなのですが、クーリックの除湿によってクリーニングの品質が格段に上がりました。

通常クリーニング工場では、アイロンの蒸気を服に当てて、糸をほぐして、しわを伸ばします。しかし、湿度が多くなると、仕上げ後の服が、蒸気によってヨレヨレになってしまいます。しかし、弊社では工場内をクーリックで除湿しているため、パリッとアイロンした状態のままお客様にお渡しできることができるようになりました。

ほかに取り組んでいることはありますか?

ダイナミックプライシング(価格変動制)と24時間対応ロボット受渡し機を導入しています。

通常、クリーニングは週末に注文が集中しやすいです。そうすると車での配送回数が上がり、配送によるVOC・NOxの放出が増加します。また、連続して乾燥機を回しすぎると、乾燥効率が下がり乾燥機の稼働時間が長くなり、その分VOCの排出増になってしまいます。

〈こちらが24時間対応ロボット受渡し機〉

 

■NOx(ノックス)って何?
 
「NOx」とは、窒素酸化物のことで、自動車の排気ガスからも排出されています。東京などの都市部では、自動車から排出されるNOxの量が一番多く、全体の半分以上を占めています。NOxがVOCと混ざり、太陽光に当たることで光化学オキシダントの原因となります。

VOCの少ない乾燥機の導入、そしてクーリックをはじめとした様々な大気環境改善に取り組んでいる有限会社フルールさん。最後に、社長である佐藤様に夢を聞いてみました。

弊社では環境や人の問題を解決するため、業界に先駆けて、乾燥機はすべて高効率の溶剤回収型のものにしました。ダイナミックプライシング(価格変動制)や24時間対応ロボット受渡し機を導入し、来店日の分散も図りました。現在では工場・お店共に、週末負荷が大幅に減り、人にも、大気にもストレスがかからないようになりました。

今後も、様々な取り組みを通じて、SDGsを意識した環境にも優しいクリーニングの提供を模索してまいりたいと思います。

 

 

記事ID:021-001-20240226-010933