株式会社小笠原染革所の取組

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PM2.5や光化学オキシダントを低減させていくため、その原因物質である窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)の削減に取り組むClear Skyサポーターを紹介します。

 

今回インタビュアーを務めてくださったのは、元AKB48メンバーで女優、気象予報士の資格ももつ武藤十夢さんです。

 

株式会社小笠原染革所

東京都墨田区にある株式会社小笠原染革所。

明治36年(1903年)創業以来、皮の仕入れは海外に直接足を運び、世界数十ヵ国から良質な素材のみ仕入れています。原皮の調達からなめし、染色、加工まで一貫して行っております。
設備保有台数も多く、卓越した技術力で、革1枚1枚に強い思いを込めて、創業から110年余り良質な革を作り続けている都内最大級のスキンタンナリーです。事業ゴミの分別処理や水質汚濁防止法排水基準に沿った適切な排水処理など、自然を敬い、地球環境と共存する生産方法を実行しています。

 

〈小笠原染革所の工場〉

 〈専務 小笠原滋之さん〉

小笠原染革所さんはどのような取り組みを行っているのですか?

〈社長 小笠原誉行さん〉

通常、革を作るにあたって有機溶剤を使用することが多いのですが、弊社では有機溶剤の使用量を減らす取り組みを行っています。具体的には極力、有機溶剤を使用せず水性ウレタンを使用しています。

■有機溶剤ってなに?
有機溶剤は、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称で、「シンナー」や「ガソリン」、「除光液」など私たちの身の回りにもたくさんあります。有機溶剤にはVOC(揮発性有機化合物)が含まれていて蒸発しやすく、大気中で気体となり、光化学オキシダントやPM2.5の原因の1つでもあります。

 

<ロータリースプレーマシン VOC(揮発性有機化合物)削減の箇所>

革の染色において、染めた色を馴染ませる工程とつや出しの工程で有機溶剤を使うのが革業界のスタンダードですが、小笠原染革所では、このふたつの工程で有機溶剤の使用を極力減らし、悪影響を抑えています。しかし、そこには並々ならぬ苦労と努力がありました。

有機溶剤と水性ウレタンの違いは何ですか?

有機溶剤はVOCが含まれていますが、水性ウレタンにはVOCが含まれておらず大気環境に優しい薬剤となります。性能で言えば、有機溶剤の方はすぐ乾いて効果が得られるため使用しやすいです。
一方、水性ウレタンは硬化まで時間がかかるため、有機溶剤ほど短時間で革に色を定着させる効果が得られません。また水性ウレタンの色を定着させる効果は、革の種類や天候などによって異なるため、仕上げの直しが発生する場合もあります。

それはとても大変なことではないですか?

 

最初の頃は色々と苦労はありました。
どんな薬剤を使用すれば、効率よく色を定着させることができるのか、試行錯誤の連続でした。
水性ウレタンにもいろんな種類があります。どの種類をどれくらいの分量で使用するか、そして吹き付ける量も色々と試行錯誤をしました。なかなか革に色が馴染まないことが続いて、苦労の連続でした。
しかし今では、水性ウレタンでコーティングすることを前提で、仕上げ工程を組み立てているので、苦労することは少なくなりました。今でも仕上げ工程で薬剤が乾きづらいことでの大変さはありますが、それ以上に環境改善に繋がるものを提供出来ていることに満足しています。

VOCを減らす取り組みは当初大変だったとのことですが、この取り組みをする中でどんなメリットがございましたか。

・社員の作業環境改善
やはり一番は、社員の作業環境を改善できたことです。有機溶剤と比べて嫌な臭いが少ない、気分が悪くならないなど、社員の健康を守れることはとても良いことだと感じています。

・薬品コストの低減
また、結果的に、有機溶剤と比べて水性ウレタンを使用する方が、薬品コストの低減にもつながりました。

・危険物に関する消防法とのからみ軽減
揮発性の薬剤は危険物に該当してしまうので、消防法に関する対応部分が少し楽になりました。

―環境のためにもなって、メリットもちゃんとある取り組みなのですね。

有機溶剤の使用を減らす取り組みをされている株式会社小笠原染革所さん。最後に、社長の小笠原様に夢を聞いてみました。


近年、工場を営んでいく条件も厳しくなっている中ではありますが、やはり弊社としても様々な世の中の変化に対応していかないといけません。代々受け継いだこの仕事をこれからもずっと続けていくために、いい製品を作っていくだけでなく、Clear Skyに参加させてもらったのもそういった流れの中ではありますが、環境に配慮したり、社員の職場環境に配慮することを、頑張って取り組んでいきたいと思います。

記事ID:021-001-20240226-010931