貧酸素水塊
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生き物の脅威となる「貧酸素水塊」
東京湾、とりわけ東京都内湾では、毎年、夏期において、底層に溶存酸素量(DO)の低い「貧酸素水塊」が、広範囲・長期に形成されます。この水塊は、水生生物の生育・生息を阻害する原因の一つとなっており、東京湾の水環境の大きな課題となっています。
図 平成24年度における東京湾の底層DO(溶存酸素量)の平面分布
(左:例年最も貧酸素水塊が広がる9月 右:水質が安定する2月)
東京湾岸自治体環境保全会議ホームページより
貧酸素水塊の影響 ~水生生物調査結果より~
成魚調査
底層の溶存酸素量が少ない9月は、確認される魚類等の生物種類数が少なくなっています。
図 東京湾アクアライン・風の塔近くの地点(St.35)の採取物 左:5月 右:9月(平成25年度)
図 平成25年度における底層DOと出現種類数の変化
図 底層DOと生物出現率の関係(1986~2002)(都環研 安藤氏作図)
底生生物調査
航路になっている地点や沖合の地点(内湾部)では、平成25年8月(夏期)の調査時に底層の酸素がほとんどなくなっており、生物は確認できませんでした。一方、貧酸素水塊の影響を受けにくい干潟部や浅海部では、春期と同様、多くの生物が夏期にも確認されています。
図 調査地点ごとの出現種数(平成25年度)左:5月(春期)、右:8月(夏期)
(本調査の「護岸部」とは、護岸手前の底泥を調査対象としている。)
貧酸素水塊の形成要因
東京湾は、もとから貧酸素水塊が形成されやすい閉鎖性の形状の海域であるほかに、陸域からの栄養塩、有機物負荷が大きいことが貧酸素水塊の形成要因の一つとして考えられています。
東京都内湾には植物プランクトンの栄養となる窒素やリンが陸域から流れ込み、たくさん溶けています。春から夏にかけ、日照時間が長くなり、気温が上がると、植物プランクトンがそれらを栄養として増殖し、それを捕食する動物プランクトンが追いつかない程になります( 赤潮 )。この大量のプランクトンが死ぬと海底にたまり、これを微生物が分解する際に酸素を大量に消費します。また、陸からも多くの有機物が海に運ばれ、分解過程で酸素が消費されています。
他に、埋め立てによる潮汐の減少や浅場・干潟の減少による浄化機能の低下、浚渫による窪地形成、垂直護岸等も形成要因として考えられています。