株式会社アンドファームユギの取組

 

アンドファームユギは、米国発祥の農場運営スタイルであるCSA(Community Supported Agriculture)※をベースにした事業に取り組み、農薬や化学肥料を使わずに野菜を育てる有機農業や養蜂、農産物の卸し・販売、管理が行き届かなくなった里山の再整備などを行っています。
今回はCSAの活動拠点となっている農園を訪ねて、代表取締役の大神さんと養蜂を担当されている長谷さんにお話しを聞きました。
※CSAとは、生産者と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約を通じて相互に支え合う仕組みのこと。
 

■CSA事業「エシカルファーミング」と養蜂、里山保全の始動

 

――貴社のCSA事業「エシカルファーミング」と、養蜂の大まかな取り組み内容について教えてください。

エシカルファーミングでは、利用客に年間10回野菜の受け取りに来てもらっています。年間でおよそ4回のイベントを行っていて、去年は餅つきや焼き芋などをしました。イベントが付いた野菜セットのイメージですね。毎年30組ほどが参加していて、都心部から参加される方もいます。CSA事業も今年で3年目に入りますが、昨年からCSA会員限定の畑を作って野菜を作っています。(大神氏)

養蜂については、付近の森に地主さんの土地があったので、そちらをお借りして林内に巣箱を設置しています。健全な生態系を維持することが重要なので、林内を間伐して萌芽更新を促しながら、高木・中木・低木の多階層となるよう管理することで多様な生きものが利用できる里山管理を行っています。また、ヤブツバキやトチノキのような高価な木材として知られる木や、キハダのような薬の効能がある木なども植えています。蜜源となるだけでなく、さらに付加価値のある植物を植栽することで、将来に向けてより価値のある里山を残していく取組を行っています。(長谷氏)
 

 

――生態系の機能を活かしながら農業やイベントなど色々な取組を実践されているのですね。堀之内(旧:由木村)で活動が開始されたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

ご縁のあった地主さんの牛舎をお借りして、農関係のイベントを行う会社を立ち上げたのが始まりです。当初は農業を知ってもらうイベントの活動が中心でしたが、2017年に里山の整備を始めた頃からは、野菜や蜂蜜の生産に絞っていきました。イベントに訪れるお客さんに直接食べてもらう機会が多く、自分の子供にも安心して食べさせられるものを作っていきたいとの思いも重なり、有機栽培に取り組んできました。(大神氏)
 

――CSAの参加者の感想やエピソードがあればお話しいただけますか。

多くの参加者が農体験を楽しんでいらっしゃいますね。大学生の研究論文に協力したのですが、アンケート調査の中で、お一人で参加する人もご家族で参加する人も受け取れる野菜の量は同じなのに、どちらの参加者も野菜の量に関わらず満足していただけている結果が得られたのは面白いなと思いました。
他に印象に残っているのは、「(草が生い茂る畑を)草刈りせずに放っておくと野菜がどうなるか見てみたい」という人がいて、実際に試してみたことですね。一般的な市民農園では、隣りの区画利用者が管理せず畑が荒れるとトラブルになりやすいのですが、CSAでは一緒に活動するのでトラブルが起こりにくく、思い思いに取り組めるところも長所だと思います。(長谷氏)
 

■CSAの普及と都市農地保全の可能性
――参加者や地元の人に対してエシカルファーミングへの理解促進を図るために工夫されていることはありますか。

住民への配慮として有機肥料はなるべく匂いが出にくいものを使っていますし、近隣の農家さんには防草シートで覆ったセットバックを設けて雑草の種が周囲に広がらないよう配慮しています。CSAでは傷がある野菜が出ることや、堆肥を使っている理由を参加者に伝える場として役に立っていると思います。(大神氏)
 
地元の方にも取組を伝えていくことで理解していただけていると思います。特に、養蜂についてはハチに対する懸念が一般的によく話題に上がりますが、一部の巣箱を見える位置に置くことで関心を持っていただき理解の促進につながっています。周囲でも、養蜂が始まってから植物の実の付きが良くなったというお話しもありました。(長谷氏)
 

――周囲への配慮や取組の発信の仕方にも色々な工夫をされているのですね。このような活動を継続させるための課題やアイデアがあれば教えていただけますか。

農地は個人で営んでいることが多く、都市部では、相続のタイミングで所有者が農地を手放してしまうことが問題になっています。弊社は農地所有適格法人なので、農地を所有し事業が続く限り管理していくことができるので、相続問題の一つの解決策になるかもしれません。(長谷氏)

――都内の農地は相続や担い手不足といった問題を抱えており、農地の面積は年々減少している状況です。そうした中、エシカルファーミングの考え方が都市農地を保全する手段の一つに成り得ると考えられますが、実践のポイントについてお考えがあればお聞かせください。

お世話になっている地主さんの言葉を借りると『みんなでやる、だよ』ということになりますね。言葉だけではなく実際にやってみる、ということが大事だと思います。なんとなく畑を耕すのではなく、その取組の楽しさを明確に示していくことで、一緒にやってみたいと思う人が出てくることが重要だと思います。それから、公益性という観点を持つことも重要ですね。(長谷氏)

CSAは手間のかかる農業ですが、買い支えてくれる消費者や一緒に農業をやろうといってくれる人がいれば農家を守ることができるのではないかと思います。今の生活の中では農家の重要性に気づくことが難しいですが、例えば災害が発生したときに、農家がいることで井戸の水や食べ物を確保することができるといった防災面でのメリットがありますね。CSAは消費者の気づきのきっかけになると思います。(大神氏)

CSAは地域の農業を知るための有効策になると思いますが、そのためには農業を実践する人が必要ですね。もしCSAに興味があれば、僕らも相談に乗ります。若い人たちが農業を担ってくれたら未来も明るくなると思います。(大神氏・長谷氏)
 

 

 

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