第1回Tokyo-NbSアクションアワード優秀賞 銀座ミツバチプロジェクトの取組

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特定非営利活動法人 銀座ミツバチプロジェクト 副理事長 田中淳夫さん
 

ビルの屋上でのミツバチ飼育を通じて、
地産地消や屋上緑化、環境教育に取り組む。

2006年春にスタートした「銀座ミツバチプロジェクト」。銀座のビルの屋上でミツバチを飼育することから始まったこの活動は、今や単なる養蜂という枠を超え、人と人、地域と地域を繋ぐプロジェクトとなっています。

 

銀座の周辺2キロ圏内から集められたハチミツは、プロジェクト発足以来、着実に収穫量を増やし、2024年シーズンの収穫量は約2.7トン。銀座生まれのハチミツは、地元の百貨店や飲食店などに納入され、銀座の地産地消商品として提供されています。
また、銀座ミツバチプロジェクトでは、銀座のビルの屋上の緑化活動も積極的に推進。蜜源を増やすという目的から始まったこの取り組みは、銀座にまつわる様々な人や都会の子供たちが自然に親しみ、学ぶ場としても多くの参加者を集めています。

 

 

田中さん:人間が植えた木や花からミツバチが蜜を集める。木や花は、ミツバチによって受粉されて実をつける。そして、その実を目当てに鳥たちが集まる。そういった生き物のつながりをミツバチと接することによって学ぶわけです。これまでに1.8万人もの方にご参加いただきましたが、みなさん、こういう体験をすると意識がガラッと変わるんです。私たちの活動は、ハチミツを収穫するだけでなく、自然環境に対する考え方や人間の生き方などを学ぶ良いきっかけにもなっているのではないかと思います。

 

銀座ミツバチプロジェクトは、銀座での活動に留まらず、日本各地にも活動の範囲を拡大。地方の中高生などを銀座に招いてのミツバチ体験や緑化活動をはじめ、広島や岡山といった都市での養蜂プロジェクトのサポートも実施しています。


ミツバチに触れ合う中で人と人がつながり、
街の新しい価値が浮かび上がってくる。

現在は地域のみなさんを中心に多くの支持を集めている銀座ミツバチプロジェクトですが、発足当初はその活動に懸念を示す声も少なくなかったそうです。それでも20年以上にわたって活動を続けられたのは「街にそぐう活動だったから」と田中さんは振り返ります。
  

 

田中さん:銀座という街は常に新しいものを受け入れる街です。でも、それが街にそぐわないものだと静かに消えていきます。私たちが長く活動を続けてこられたのは、単にミツバチを飼うだけでなく、どうしたら街のためになるか?どうしたら地域のみなさんの理解と協力を得られるか?ということを大切にしてきたからなのではないかと思います。

 

銀座ミツバチプロジェクトは、環境活動という側面はもちろん、銀座でビジネスや生活を営む様々な人を繋げるというという面でも街に多様な影響を生み出していると田中さんは語ります。
田中さん:銀座にはオフィスビルや百貨店、飲食店、ハイブランドのショップから和の文化に至るまで多種多様なものが凝縮して光輝いていますが、ミツバチの巣箱の前にたくさんの人が集まることで、人と人がつながり、それぞれが持っている知恵や技が掛け算式に組み合わされて新しい価値が生み出されていきました。世界クラスのパティシエやバーテンダーがハチミツを使ったスイーツやカクテルを考案したり。以前は見えづらかった地域のつながりや街の持っているポテンシャルなどが、この活動を通じてずいぶん顕在化されたのではないかと感じています。

 


「おもしろそう」から生まれる人の輪。
屋上緑化の一環として芋焼酎や和紙づくりも。

NbS活動を実施する上で、地元の賛同や協力は非常に重要なポイントの一つ。銀座ミツバチプロジェクトは、どのようにして多くの人の支持を集めていったのか? 田中さんによると「楽しさ」や「おもしろさ」を体感してもらうことが秘訣とのこと。

 

田中さん:難しい顔をしていたら誰も来ませんからね(笑)。「ミツバチっておもしろいですよ」と言って、巣箱のところまで来てもらって実際に作業をしてもらうんです。そうやってミツバチを通して足元の環境を五感で感じてもらえば、きっと「これ、おもしろいね、すごいね」となるわけです。

 

銀座ミツバチプロジェクトでは、養蜂よりもハードルが低く、より多くの人が屋上緑化に取り組めるよう、ビルの屋上でのサツマイモ栽培もおこなっています。収穫されたサツマイモは焼酎に加工され、新たな「銀座の名産」として人気を博しているほか、その売上は屋上緑化の推進に役立てられています。さらに、和紙の原料となる樹木もビルの屋上で栽培しており、銀座生まれの和紙はホテルのインテリアとして採用されています。

 

 

街のポテンシャルを活かして、さらなる展開を構想。
銀座をグリーンインフラのモデルタウンに。

養蜂に端を発し、その成功を活かして活動の幅を広げ続ける銀座ミツバチプロジェクト。今後も全国を視野に多彩な活動を推進するとともに、地元の銀座においてもさらなる展開を構想しています。

 

田中さん:現在、都心では高速道路の地下化が始まっています。その結果、銀座を取り囲んでいる高速道路約3.2キロが緑化される見込みです。今後はそういったエリアに全国各地から蜜源になる樹木を集めてマルシェやお祭りを開催できたらと考えています。銀座にはいろいろな地方のアンテナショップもありますし、県人会のネットワークもありますので、その人たちとも連携しながら「グリーンインフラ」を実現したいですね。今の時代、環境への取り組みは必須の課題です。そういう時代の流れの中で、ソウルの清渓川やニューヨークのハイラインを超えるモデルケースとして世界に発信できたら素敵だなと思っています。

 

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記事ID:021-001-20250131-012393