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特定非営利活動法人銀座ミツバチプロジェクトの取組

銀座ミツバチプロジェクトは2006年よりビルの屋上で養蜂を行っており、養蜂のみならず屋上緑化や子供たちへの環境教育など幅広く活動を行っており、その取組の輪は銀座から、日本全国、そして海外に向けて広がり続けています。

今回は銀座の紙パルプ会館10階にある銀座BeeGardenを訪ね、小鳥のさえずりが聴こえるテラスで田中さんにお話しを伺いました。

■ミツバチから繋がる
――銀座で養蜂を始めた経緯について教えてください。

2006年から紙パルプ会館の屋上で養蜂活動を始めて、銀座という繁華街の真ん中から「地産地消」と「環境」というテーマで取組を発信しています。
紙パルプ会館には会議室があるのですが、「銀座食学塾」という食について学ぶ会の開催にあたって講師を探していたところ、ビルの屋上を探している養蜂家の藤原誠太さんと出会いました。銀座周辺は皇居や霞が関などに桜が咲いた後も花が咲くみどりが多くあり、このような場所で養蜂が出来たらいいねと話していたのですが、場所を提供するだけのつもりが、自ら養蜂活動に携わることになるとは思いもしませんでした(笑)。しかし、藤原さんにしっかり指導していただいたこともあり、初年度からはちみつを生産することができたので、最初から松屋デパートや周辺の老舗と呼ばれるお店とコラボできました。現代も銀座にはパティシエなど職人さんが多い土地柄なのですが、まさにそのような地域性が光った瞬間でした。

――周辺の方々も一緒に養蜂の作業をされているのですか。

毎週土曜日に活動しています。服装など、安全に配慮しながら手伝っていただいています。多いときは20名ほどで採蜜や巣箱の手入れを行います。私たちの団体はNPO法人なので、メンバーには地域の一般の方や従業員の方、法人もサポーターとして参加しています。ミツバチによって人と自然が繋がるだけでなく、人と人がどんどん繋がっていくことが面白いですね。
百貨店の販売スタッフにも手伝いに来てもらうのですが、活動に参加したスタッフが売場に立って、商品の背景などをお客様に直接語る姿を見たときに、銀座に元々あった歴史や文化といったものに、環境のメッセージが一緒になって繋がっていく世界観を見ることができました。
 

■地域をザワつかせる
――銀座の地域性が、ミツバチによって顕在化していったのですね。全国にも都市養蜂の活動を展開されていますが、他の地域についてはいかがでしょうか。

昨年は広島県立世羅高校などが参加する「広島平和ミツバチプロジェクト」が発足しました。4月のプロジェクト発足後2週間で桜のはちみつが取れたので、G7サミットメディアセンターでお披露目させていただきました。メディアが来るので学校中が大騒ぎになっていましたね。そして、ある男の子が養蜂家になると決めて、今は沖縄に修行に行っています。一人の男の子の人生が変わってしまうんですね。
そうやって地域が動いていく。よく私は『ザワつく』と言っています。ザワザワしていくのがすごく面白い。世羅高校が急ににぎやかになると、他の高校の先生からも養蜂をやりたいという問合せをいただきましたし、地元の教育委員会も喜んで、来年も継続できるように予算をつけることになったと聞いています。

広島は原爆により多くの木々が焼失した後、全国から木々が寄付されて、今の緑豊かな平和大通りが出来ています。そこに平和のシンボルであるミツバチが蜜を集めていく。プロジェクトが成長していくと、そこにあった歴史と今まで見えなかったものが繋がっていく瞬間があり、さらに様々な世代の方が関わることによってプロジェクトが発展していく様子を何度も見てきました。
 

――都市養蜂を継続していく中で少しずつ活動が変化していったと思われますが、ターニングポイントになったことは何でしょうか。

ターニングポイントで言うとリーマンショック、東日本大震災、コロナ禍など、私たちの活動が止まってしまうと思うような出来事が起きましたが、その後、ますます自然と共生していくような社会が見えてきています。
国連は2050年までに都市で暮らす人の割合が約7割になると発表しており、今後さらに都市に人口が集中していくと考えられています。都市での人間の経済活動が地球環境に負荷をかけていることは明らかで、銀座でもビルの屋上を緑化したり、そこに集まる多様な生きものとの共生を都市からデザインしていく時代に入ったのではないかなと思いますね。だからこそ、都市養蜂のミツバチプロジェクトが注目されているのだと思います。

このように時代が私たちに追いついていると思っていて、例えば日本橋の高速道路を地下化する事で使われなくなる銀座の首都高速道路の跡地に47都道府県の木々などを植えて緑化し、マルシェやアンテナショップなどを設けたら面白いと考えています。
また、近年では企業や行政の新人研修の場として使われることも増えてきて、このような研修の場としての機能をもっと戦略的に使用していきながら対価を得ることで、その費用を子供達への環境教育や屋上緑化に投資していく仕組みができればいいなと思っています。
 

■楽しいことを重ねていく
――最後に、自然の機能を活用して社会課題に取り組む際の実践のポイントについて教えてください。

活動をする中で様々なご意見が寄せられますが、社会の中で存在できるように発信していかなくてはいけないですね。そして、活動を理解していただき、良いこととして認められなければいけないと思うのですけれど、もう一つ、少し遊び心があったほうがいいですね。楽しいことであった方がいい。
取れたはちみつを食べる感動や、銀座のクラブの方々が着物で農作業をしたり、取れたはちみつをバーテンダーさんが目の前でカクテルにしてくれたり、地方から来てくれたなまはげや秋田犬が銀座の街を歩いたり。大変なこともあるけれど、面白いから皆さんに手伝っていただけると思っています。
環境について机の上で学んで分かったと思っても、次のアクションに繋がるのは自分が感動したり、興味を持ったり、面白そうだったりすることで、そこから次の行動へ動いているとその次がまた見えてくる訳ですよ。その先に社会がこれから歩んでいく姿を描いて、社会課題を解決するような仕組みができれば、より多くの賛同を得て成長していけるのではないでしょうか。
 

記事ID:021-001-20240417-011348